”孤独の鎧の奥底”

大傑作「レゴ・ムービー」のスタッフが集結して「バットマン」ブランドをレゴ化するという大デフォルメ企画に乗りました。結果は最高！魂か何かを感じて、現実にもそれを想えるような構成になっていたので油断ならぬ作品を目の当たりにしてしまいました。

あくまで「バットマン」のレゴ化を行い、メタ演出を多用し、コミカルに悪ふざけするノリを入れながら（特に冒頭のロゴが出るところで開始する悪ノリゼリフ）も、そのCGアニメーション技術をフルにぶち込んだハイスピードアクションとカメラワークで圧巻なる冒頭です。”This is BATMAN”とお祭り映画的なチューニングをしてくるかと思いきや、バットマンとジョーカーのセリフの掛け合いの中で垣間見る互いの孤独と内に秘めたる想い。「バットマンvsスーパーマン」を揶揄するセリフ回しの中に炸裂するバットマンのナルシズムと崇高さを装った哀しみにグッと引きつけられ、そして再びナルシズムのお祭りのようなハイスピードアクション&カメラワークから、基地に戻ったバットマンを待っている反響音を伴った静寂と孤独。料理を電子レンジでチンするときの間合いの使い方と、食べ物を咀嚼するときの反響音からただならぬ作品の奥行を見てしまいました。

バットマンはあくまでデフォルメ化され、メタ化かされているのですが、そこにある”真実のバットマン”そして過去に刻まれたブルース・ウェインのトラウマと孤独と、決して記号化せずにメインストリームとして過去と向き合い主人公を成長させる普遍的な物語に仕上げようとする気概がガンガン伝わってきます。そんな真面目語りにならぬように照れ隠ししにしてはあまりに徹底された小ネタやギミックの使い方の余念のなさに脱帽です。「バットマン」シリーズの過去作をレゴで再現するというマニアへの配慮も内向きにならずプラス方向。

バットマンの孤独やナルシズム的な振る舞いの鎧の中へ踏み込むために登場するロビンの存在や、バットマンの存在意義にストップをかけるヒロインキャラ、そして何よりバットマンに対してなみなみならぬ執着心を見せるジョーカーの配置図や相関図のワクワク感。冒頭のシーンからバットマン×ジョーカーの恋愛感情にも似た構図の切り取りから中盤→終盤へと展開するのも唸らずにはいられません。好き×嫌いの表裏一体性と、孤独の鎧と家族を欲する表裏一体性を、クライマックスのレゴならではのシークエンスやそれこそ「バットマン」シリーズの根源にあるブルース・ウェインの悲劇への解答をデフォルメ化した彼らの英雄譚として飾るカタルシスに思わず感涙。

子供向けの飽きさせぬスピード感、大人向けの普遍的な自身の影との向き合い、そしてマニア向けにもなる独自解答やギミックの細かさ。

「ジャスティスリーグ」の連中は陽キャラとして
「バットマン」は肉体を鎧にこじらせた陰キャラとして

しかし根源に感じたいモノは誰にでも普遍性がある。

”家族”という物語にスポットを当てて大正解であり、歴代バットマンシリーズにおいて異質であり本質である傑作であると思える作品。

「レゴバットマン ザ・ムービー」
原題「The LEGO Batman Movie」
2017/4/1公開 アメリカ作品 2017-128


前作レゴムービー動揺、LEGOで構築された見事な独自な世界観をコミカルな笑いと感動を織り交ぜて作り上げています。
ユーモアいっぱいのセリフや登場するキャラクターに相反して、何故バットマンは孤高で独善出来なのか、その内面に深く入り込みそして誰かと一緒に生きることの素晴らしさを体感し、そしてさらに成長していくそんなヒューマンストーリーが見事に描かれています。良い作品です。
それにしてもキャラクターとしてジャスティスリーグメンバー、さらに敵としてサウロやヴォルデモートさらにキングコングやジョーズ、グレムリンなどが出てくるのは楽しめますよ！！

ブロック玩具の「レゴ」を題材に描いた大ヒット3Dアニメ「LEGO（R） ムービー」に登場したバットマンを主人公に描くアドベンチャーアニメ。前作「レゴ(R) ムービー」に引き続きウィル・アーネットがバットマンの声優を務め、宿敵ジョーカー役はザック・ガリフィアナキス、相棒ロビン役はマイケル・セラ、バッドガール役はロザリオ・ドーソン、執事アルフレッド役はレイフ・ファインズがそれぞれ担当。前作でアニメーション共同監督を務めたクリス・マッケイが監督。

カタール→フィンランドの機内で視聴。
　
バッドマンをとことん茶化しながら、作品として秀逸にまとめ上げた過去最高のレゴムービー。もはや全てを把握できないほどのパロディの嵐でカオスですが、ジョーカーとの「正義と悪の哲学的な関係性」などを軸に物語はちゃんと進みます。
　
個人的にはサウロンの目(ロードオブザリング)やヴォルデモート(ハリーポッター)と、さらっとバッドマンたちが闘うシーンに心の底から感動しました笑
　
シナリオ点4
構成点4
演出点4
映像音楽点3
印象点4
エモーショナル点4
追加点✕
総合点3.8