滝和也

ブラック・スワンの滝和也のレビュー・感想・評価

ブラック・スワン(2010年製作の映画)
3.7
全ては姫君の
ために…。


全てはナタリー・ポートマンのためにある作品でした。圧倒的な演技、その表情、表現力、絶賛です。またそれを引き出すアロノフスキーの演出プラン。どの映画より、彼女の表情を捉えたアップが圧倒的に多い。それに応える表現力。まさに観衆を巻き込み、鬱な幽玄の世界に落とし込みます…。

ニナ(ナタリー)はバレエ団の新作白鳥の湖のプリマに選ばれる。だが彼女は妖艶な黒鳥を演じることに悩みを抱え、周りの世界から隔絶され始める…

彼女の正統派としての美しさ、その完璧さ故の脆さ、儚さはSWの姫君のイメージ故でしょう。それを利用し、崩壊する精神を紡いでいくこの監督。それは、ロマン・ポランスキーが繊細かつ優美なカトリーヌ・ドヌーヴを起用した反撥に繋がります。

性的な抑制、拒否感が彼女を悩ませる、そして精神の歯止めが極限に達する時、人は壊れていく。それに関してはポランスキーの作品と同じ。ポランスキーはよりストレートに描いていますが、アロノフスキーはそこに、プリマとしての重圧、他者への被害妄想、未来への不安、根源となる、全てを母に抑制された生活をきちんと描いてくれています。より理解されやすい内容に落とし込まれています。

但し…この内容、好きな内容でなく、正直苦手な内容なんですよね。映画としては素晴らしい。後半のラストへの畳み込む内容は素晴らしいのですが、前半で反撥かな…と思った矢先、何回か止めて喫煙休憩…。そうしないと辛くてやめちゃいそうに…。バレエ団の設定や、女性の嫉妬みたいなものから、スゴーく離れた精神の持ち主なんですよ、私が。見てる映画を見て頂ければわかりますよ(^^)。

落ちてる時にはオススメできない映画です。複合的に精神に爪痕を残していく作品ですので。
滝和也

滝和也