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冷たい熱帯魚のHKのレビュー・感想・評価

冷たい熱帯魚(2010年製作の映画)
4.2
「愛のむき出し」などの園子温監督による実際にあった「愛犬家連続殺人事件」を題材にしたクライム映画

園子温監督だが、今回の映画は結構面白かった。前回がちょっと現実味が無さそうな展開ばかりで少々呆れたり、オーバーな演技で魅せるところがふんだんにあったため、ちょっと雰囲気に乗れなかった所があったが、今回はある程度現実味があり、オーバーな演技もあるが吹越満さんのドライな演技の対比もあってかある程度落ち着いて楽しむことができた。

この映画における主役はやはりでんでんさんでしょうな。最早度を越して一種のカリスマ性が見られる。スカーフェイスのトニー・モンタナみたいな風格が感じられた(スカーフェイスまだ見てないけど。)主人公の亭主がある程度自分に似ている所があり、偽善ぶらずに本性丸出しで生きているこの人のほうがある意味生き生きとしているというのがなんかなと思ってしまった。しかし、良心の呵責とかないんだろうなこういう人って。彼のラストも呟いてる内容も相まってちょっと悲しくなった。

あと、個人的にはでんでんの奥さんを演じていた黒沢あすかさんがかなりタイプの人になった。「もっと声出して!」とか台詞は男らしく、女らしさもあるため一番好きなタイプの女性だと思いますわ。

最初から最後までスプラッター描写が満喫である。個人的にはグリーンインフェルノとか無垢の祈りとかで慣れたこともあってか全然大丈夫であった。あの築地のマグロを解体しているような作業シーンはある種の爽快感があって好き。

しかし、園子温さんって血の描写や性行為の描写一つとっても、本能的というか動物的な所があるからな。だからこそ、言葉で思いのたけをブワーっというような描写がなんかぎこちなくなっちゃうところがあり、そこは個人的にはあまり好きじゃない。この映画でも、終盤で主人公が同じようなこと奥さんにするけど、なんかあの構図はどうも微妙になってしまう。

最後のお父さんの行動も、あれが彼なりの娘に対する償いだと思うと泣けるのであった。

この映画の結論は「地球は美しい」ということでしょうな。
HK

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