LalaーMukuーMerry

海は燃えている イタリア最南端の小さな島のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

4.0
ランペドゥーザ島、人口6500人の小さな島。Google mapで位置確認。シチリア島の南西、というよりチュニジアの東、距離的にはアフリカの方がシチリア島よりも近い。なるほどこれなら難民がやって来るのも頷ける。と言ってもアフリカからの距離は約130km、北九州から対馬までの距離くらいあるから小さな船では危険だ。それでも、この20年で40万人の難民が上陸、海峡で溺死した人は約15000人と最初に説明がある。リビア、チュニジア以外にも、サハラ砂漠を渡ってマリ、ニジェール、ナイジェリアからも難民が来る。
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でも、このドキュメンタリーで描く難民たちのショッキングな様子は3割程度、残りの7割で描くのは平和に暮らす島の人の生活ぶり。漁師の息子の少年(パチンコ遊び、片方の目が弱視と分かって治療用眼鏡で生活する様子)、素潜り漁をする人(この島は石灰岩の海蝕洞と透明な海で有名)、ラジオのDJ(リクエストでかかった曲がこの作品のタイトルと関係する)…穏やかな暮らしがあるから、その対比で難民の様子が際立つ。彼らも追われる前は穏やかな暮らしをしていただろうに…
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イタリア政府は島に難民収容センターをつくって救済をしているけれど、一般の人たちは難民とは全くつながりがなく、互いに何の影響もない。何という不平等、これが現実なんだな。頭で想像してわかっているつもりでも、目で見ないと理解しえないことがある。そこを見せるのが監督の意図なのだろう。この二つの世界の両方に関わって現実を知っているのは医者と収容センターの職員だけ。難民たちはこの後どこに行ってどんな暮らしをするのだろう? 
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日本は難民受け入れの数が先進国の中ではお話にならないくらい少ない。こんなの見たら「自分たちさえ良ければいい」などと思ってはいられない。それが普通の感覚だと思うけど、ヨーロッパで移民・難民問題は大きな国内問題になっているから、人道に訴えるだけで、無責任に受け入れ続けるわけにもいかない現実もある。難民発生のもとが絶たれることを祈るのみ・・・
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別角度からの注意を一つ。説明なさすぎで、淡々としすぎ。感覚鈍った状態で見るとおそらく寝てしまう作品です。