ふしみあい

ある戦慄のふしみあいのレビュー・感想・評価

ある戦慄(1967年製作の映画)
5.0
白黒の荒い映像がめちゃくちゃカッコよくて痺れる。
夜の映像なのに地下鉄の光とか街の濡れた道路の反射とか切り取り方がとても綺麗。
深夜の地下鉄に乗り合わせた数人の乗客。
そこに酔っ払いのチンピラ2人が現れる。好き放題、嫌がらせのオンパレード。
駅と駅の間隔が長い!早く駅について!と思うも駅についても降ろしてもらえない。1車両という限定された空間で酔っ払い2人組によって徐々に浮き彫りにされる、人間の性質。
ここまでヤバイ人じゃなくても、どこか変な人がいたら車内変な空気になるし、絶対見て見ぬフリするよなあ、と現代でも十分通用する設定。「どこにいた?」と問う後味の悪さもキレキレ。

狭い車内で全力疾走してぐるぐる回るカメラワークが見られると思わなかった。
密室で人を描いているのにカメラが動く、いろんな角度から切り取る。すごい。

一見何も関係なさそうな登場人物たちが同じ目的地を持ち、徐々に一点に集約して行く。言葉で説明することなく、地下鉄の車両のドアのプレートや、酔っ払いのおじさんのカットとかでさっきと同じ車両なのだということが映像的にわかる。当たり前かもしれないけどそういう細かい演出がじわじわ効いてくる。

深夜のNYの地下鉄に集まってくる各キャラクター達の描き方が非常にシンプルかつ丁寧。多くない時間の中でたくさんのキャラクターの関係性を少ない言葉や仕草、役者の演技で見事に表している。

50年代の深夜のNYの地下鉄は実際にものすごい治安の悪さだったらしくて、黒人差別や当時の時代背景が映画にも出ていて面白い。

配役も秀逸で地下鉄で好き放題やるチンピラの一人、ジョーがSMAPの香取くんに見えてしょうがない。目がいっちゃってて笑顔が怖い。
そのほかの登場人物もそれぞれに面白い。
後にキーマンとなる軍人の男の人はオクラホマ出身なのだが、純朴そうな笑顔と眉毛の下がり具合が、いかにもオクラホマ〜〜って感じ。

先が読めない展開であっという間の100分だった。