タキ

しあわせな人生の選択のタキのレビュー・感想・評価

しあわせな人生の選択(2015年製作の映画)
3.8
肺癌で死にゆく友人フリアンのもとに親友のトマスがやってくる。そのふたりの4日間の物語。フリアンとトマスがどこで知り合いどのように友情を育んでいったのか詳しくは語られずセリフの断片で知るのみだが、語られないからこそこの4日間がより濃密に饒舌に語りかけてくるようだった。
犬の里親を探し、延命治療を断り、葬儀社では自分の葬儀の手配をし、離婚した妻との間の息子、ニコに会いにアムステルダムまで行く。人生の選択の4日間は決して暗いものばかりではなく、ロードムービーのような面白さもある。とつぜん連絡もとれてない息子に会いに行く様子は少年のふたり旅のようなはしゃぎようでほほえましい。
フリアンが病気のことを知ってから自分を無視した人間に苛立ち、わざと声をかけるマネをしたかと思えばむかし寝取った女の夫に会って顔を隠して知らぬフリをしようとしたくだりには笑ってしまった。いま幸せなその男はフリアンの体を労わる余裕があり、流した浮名も遠く過去のものになっており、ホッと肩の荷が降りたと同時にさみしさも漂う。
そして愛犬トルーマンとの別れは涙なしでは見られなかった。里親のもとにたった一泊でもぐずるフリアン。頭では分かっていてもトルーマンと過ごす日が一日減ってしまうことの辛さが切実に伝わってきて胸が締め付けられた。
ラスト近くのトマスとパウラのシーンは他に寄る辺のない残されるもの同士の魂の交歓だったのだろうなと思うけれども男と女の作法としてすぐにSEXに結びつくのは短絡的ではなかったかと思う。
ハビエル・カマラを以前なにかの映画で見たことがあって映画の間中わからなくて終わってからウィキを見た。テレビドラマ「ピウス13世 美しき異端児」のグティエレスだった。スッキリした。
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