「セシリア」はニックネームの「シー」で呼ばれてるんだけれど、全然"see"できないというところに痺れる。
ヌーベルバーグの担い手たちが「作家主義」を提唱するまで、映画は製作会社のカラーで観るのが当たり前だった。
「MGMのミュージカルだから観に行こう」
「ディズニーのアニメだから子供を連れて行っても安心」
「ワーナーのギャングものはハズレないよね」
そして、
「ユニヴァーサルのモンスター映画はすげぇ怖いし最高じゃん」
カイエ・デュ・シネマ以来、「ヒッチコックは神」「ハワード・ホークスだから凄い」みたいな時代になって、製作会社のカラーはどんどん薄れていった。
ところが揺り返しというか、最近は面白いことに、製作会社が再び映画ファンの興味を刺戟する時代になったようだ。
「フォックス・サーチライトだから、良品に違いない」
「A24だから、絶対劇場に足を運ぶべき」
そして、忘れちゃいけない、
「ブラム・ハウスだから、間違いなく怖くって楽しいよ」
本作は、(ダークユニヴァースとしては頓挫しちゃったみたいだけど)「モンスター映画の老舗ユニヴァーサル×劇場で観る価値のあるホラー製作会社ブラム・ハウス」の極上エンターテインメント。
しかも、社会的メッセージもトッピングされてるのが素晴らしい。
ジェイソン・ブラムさんには、くれぐれもワインスタインみたくならないで、高打率を続けてほしい。
あ、ごめん。リー・ワネル。今回のレビューはあえて「製作会社主義」を論じたので、あなたの作家性をオミットしちゃった。
でも、もちろん、あんたのことも大好きだよ(はぁと)。