K助

インディ・ジョーンズと運命のダイヤルのK助のレビュー・感想・評価

1.9
『レイダース/失われた聖櫃』から始まるインディアナ・ジョーンズ博士の冒険、最終譚。
心配なのは、81歳になったハリソン・フォードに、インディ・ジョーンズが演じ切れるのか、という事。『スターウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』や『ブレードランナー2049』でもかなりキツそうだったのに、冒険活劇たるインディ・ジョーンズシリーズでは老人虐待にしかならんのでは!?、的な。

作品としては、当然過去作を見た事が前提となる作り。所々に引用される懐かしいシーンに笑いつつも、全体として見ればかなりスケールダウンしている。今作でシリーズ完結を標榜しているだけに、今までの総決算と、今までを超える物語を期待したくなるが、70歳で大学を定年退職したインディが主役、周りを固めるのは新キャラ【のみ】という時点で、「これ、インディでやる意味ある?」という仕上がりにしかなり得ない。期待していなかったとは言え、冒険譚としては『クリスタル・スカルの王国』より残念なものになるとは、流石に想像もしていませんでしたよ。

シリーズ最終作でありながら、今回は敵のスケールが一番しょぼい。敵がナチス残党というのは良いのだが、フレデリック・フォーサイスの描いた「オデッサ機関」のような規模が大きく実力のある組織ではなく、たかだか数人の、チンピラの寄せ集め。お前ら、マッツ・ミケルセンが出ていれば満足なのかと小一時間。
そしてインディの仲間は、キャラの行動原理も理解不能な若い女とスリの少年の2人。若い女はインディの旧友の娘なんだけど、なんの考えもなく刹那的に生きる、ある意味現代的とも言えなくは無いが、芯が全く無くてキャラ立ちが「金の亡者」という、ドン引きするような存在。スリの少年も、パイロットを夢見ているという事以外は、ただ単に手ぐせと喋りが悪いだけのキャラ。
敵も味方も、「キャラクターの作り方」という教本で提示されたテンプレートそのままを見せられているみたいで、存在感も無ければ思い入れも持てない。

まあそれは、今時の映画はこの程度だとして納得しよう。しかし、インディと敵が追い求める「アンティキティラの機械」。これが、一体どんなもので、何をもたらすもので、敵はこれを使って何をしようとしているのか。これが劇中で明示される事はなく、敵の目的も最後の最後になって一言で明かされるだけなので、観客は2時間半の上映時間中、「で、君たちは一体、何を必死になっているのかね」状態。
そして最悪な事に、敵の思惑が実現したとして、それが何故に彼らの望むものにつながるのか、これもさっぱりわからない。
ええんか、そんないい加減な作劇で…(涙)
エンディングはお約束な展開ではあるが、シリーズを完結させる作品のものとしては悪くなかった。が、そこに至る過程には納得いかん。あれは残るべきでしょ、70歳の孤独な老人としては!!

81歳になったハリソン・フォードがインディを演じる事はもうないだろうから、これにて僕にとっての「インディ・ジョーンズ」シリーズは終わりになるのだが、なんとも消化不良としか言えない出来であった。

自分の好きだった映画が「作品」ではなく「コンテンツ」として扱われるようになってから、「思い出」というタンスの中にその映画を片付けていく。そんな毎日が続いている気がしている私である。
K助

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