シネマスナイパーF

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグのシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

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スパイダーマンのような親近感も、スーパーマンのような圧倒的ヒロイズムも、彼には存在しない
しかし、彼は底に足を取られ真っ黒になりながら、それでも這い上がった


今、「スーパーヒーロー」は、大量に存在しています
しかしそれを見ることができて感じることができるのは、画面の中だけです
この作品も、残念ながら御多分に洩れずではあります、が
子供達が、ひいては僕たちが小さい頃、ヒーローを見て感じていたあの感情こそが、ヒーローの存在意義に他ならないのであり、だからこそ、いつだって憧れ、焦がれ、たとえどういう形であれ必要とするのです


母を亡くし、汚れた領域で生きる父と育った、ヒーローを信じる女性が、現れた男にヒーローを見出し、ヒーローとは、力をどう使うべきなのかを説き続ける

男は気づく
何にというわけではない
全てに気づく
その瞬間、それを目撃した僕らも同じように、気づいてしまう


この作品は、血と金の世界の中で、確かな「正義」を見出していくという、言ってしまえば「正義とは何か、なんてことで迷わないし揺らがない」、そんなストレートなヒーロー魂を、全く新しい「リアルでダーク」な作品として描いてみせました

今まで何度も描かれてきた、「力を手に入れたもの同士による対決」で、「力の使われるべき道」を、否が応でも納得させたうえで、最後はやはり、ヒーローとはどうあるべきなのか、どんな存在こそがヒーローなのかを、揺るぎない定義として再確認させてくれます
エログロにまみれた血みどろの作品で描けたんですよ
ひとりの薄汚いスケベなゴロツキの物語として描けたんですよ

日本のアニメがモチーフとはいえ、日本では絶対現れなかったでしょうし、アメリカからも生まれ得なかったでしょう
「マカロニ」はまだ確かに存在する、そう高らかに宣言するような
これにつきます、快作でした


もし僕らの前に、本当に、鋼のような肉体を持った正義漢が、YouTubeや映画から飛び出してきたら
その時は
皆でこう呼ぼう、鋼鉄ジーグ