踊る猫

愚行録の踊る猫のレビュー・感想・評価

愚行録(2017年製作の映画)
4.3
渋い映画だな、と思わされた。私には珍しく原作を読んでいたのだが原作の旨味はそのままで、しかし原作の奴隷に陥らずに独自のクオリティを保って映画化されたという印象を感じる。そこにあるのは「愚行」の数々だ。殺害された家族をめぐる周囲の人間の語るエピソードも、取材をする主人公とその妹のエピソードも、全てが等しく愚かしくそしてこれ以上ないほど人間臭い。人間とはここまで愚かなものなのか……しかしそれを説教臭くなく、過度にエンターテイメント性を付与せずに地味に手堅く描いているところに唸らされてしまったのだ。実力派の俳優陣が、しかし泣き叫んだり喚いたりせずに卒なく演技をこなしている。満島ひかり氏の独り語りの場面の長回しに個人的には唸らされるものを感じさせられた。ただ、この映画は何処か軽い。そんなにトラウマ級になるような重苦しさを感じさせないのは、ウェルメイドに出来過ぎたストーリー故の仇か。
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