てっきり鑑賞済みと思ってたらまだ観てなかった。脚本斉藤信幸、助監督菅野隆、撮影安藤庄平、なんか期待しちゃう顔ぶれと思ったら期待以上だった。良い脚本で丁寧に撮ると佳い映画を撮る安定の藤井克彦監督。ロマンポルノおなじみないつもの山荘での半分密室劇。ファニーゲームを彷彿とさせる序盤の平和な緊張感とその後の胸糞悪さ。水島美奈子はまじで素晴らしい女優。主人公の酒井昭の演技もめちゃんこ素晴らしいし、彼がぶっ壊れてからはもう目が離せない。酒井昭の彼女役の川島めぐもよき。たぶんストリッパー出身とかなんだろうなって思う、新人なわりにトシいってる筑波恵美さん（多分この1本だけ出演）、存在感がすごい。音楽が中森明菜もクラシックも全部が全部バッチリ決まってるし、鬼気迫る映像美、特に夜明けの草むらっぽいとこのシーンとか本当に素晴らしすぎて言葉を失う。U-NEXTで9月11日まで配信、観ておいて本当に良かった。きっと藤井克彦ベスト。女地獄森は濡れたに並ぶのではないか。この手の山荘系バイオレンスロマンポルノは何本も観たけどこれは出色。青春でレジスタンスでバイオレンスな傑作。

息子と恋人の仲を裂くため、最悪な方法をとる金満家の父と姉。その非道な現場を手伝わされる青年は、恋人が輪姦されたばかり。
カーッとなった青年は、弾が無尽蔵のショットガン撃ちまくり。それが良心じゃなくて他者への恨み嫉みからきていて、セックスの無理強いをするあたりは確かに『死ぬにはまだ早い』に似てる。
一人淡々としている娼婦の程よい雰囲気。名もない青年は脳漿を道にぶちまけるだけ。

別れさせ屋に従事している青年（酒井昭）が、駆け落ちしたカップル（水島美奈子＆高橋淳）の悲恋を、自身の境遇と重ね合わせていく。縁切り業務に勤めている青年の義憤の高まりを描いている、日活ロマンポルノ。

青年が所属する別れさせ屋の手口は、カップルの彼女に対する強姦行為と写真撮影を利用して、破局へと向かわせるというもの。下っ端の青年は、恋人の強姦被害という心の傷を背負っており、そのカウンター精神で突発的な言動を起こしている。

登場人物の心理状態を小気味よく開示するため、「この人は何を思っているのだろう？」という、興味の連鎖が持続する。とりわけ、仕事で連れてこられただけの娼婦（筑波恵美）が一番マトモな思考をしており、威勢の良い啖呵を切るところが面白い。

厭世気分を滾らせて、振り上げた拳を下ろしたら、全方位を敵に回した加害者の立場になってしまう。60年代若松孝二作品のような尖ったテイストが鮮烈であり、「後に引きずる系」として、出色の仕上がりになっている。

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