しおえもんGoGo

マンチェスター・バイ・ザ・シーのしおえもんGoGoのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

アメリカっぽくないというか、こういう言葉にならないしぐさや微妙な表情で語る映画が、多人種国家のアメリカでも一般に評価されるんですね。

主人公リーはとにかく無口。無表情だし何を考えているのか分からない。でも彼の身に起きたことを知ると無表情にならざるを得ないし、無口にならざるを得ない彼の気持ちはビシビシ伝わってくる。いろんな人に「”あの”リー・チャンドラーか」と噂される小さな町ならなおさら。

一方甥のパトリックもまだ16歳。友人も恋人も多くてまさにリア充な彼にリーの気持ちや事情を察しろというのは酷な話で、突然父を亡くした上に突然引っ越せと言われるフラストレーションも良く分かる。おじさんは何も話してくれないし。

もうこのリーの苦しみがパトリックに伝わってないのがもどかしくて、私が言ってあげようか?みたいな気持ちにすらなるけど、でも言えないリーの気持ちも分かるし、パトリックが文句を言うたびにずっと「ああああ」
という気分に。

不満は見せても悲しみは見せなかったパトリックが冷凍チキンを見て取り乱すシーンと、リーがついにその辛さを短くだけれど吐き出したシーン(それを聞いて泣いたパトリック)に涙がでた。


でも重く悲しいばかりではなく、リーが無表情のままでパトリックの我儘と奔放さにうんざりしてるとか、パトリックの彼女の母親がリーを誘惑しようとするのに全く会話が弾まない気まずくなってくると、母親が着ている露出度高めの勝負服がどんどん笑えてくるとか、ちょとしたユーモアもあって見やすい。

終盤のボートで彼女とイチャイチャしてるパトリックを見て、一瞬だけ昔のような笑顔を見せたリーが印象的だった。

とても地味だけど、非常に丁寧に作られていて、じっくり味わいたい映画だと思う。

それにしてもアメリカの親って一々子供を送らないといけないの大変そう。親にとっても子供にとっても。
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