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マンチェスター・バイ・ザ・シーのtjZeroのレビュー・感想・評価

3.6
ボストンで便利屋を営むリー(ケイシー・アフレック)は、兄ジョーが危篤との報を受け、かつて暮らしたマンチェスターへ。
独り残された甥っ子パトリックの面倒をみることになるリーだったが…。

マンチェスターってイギリスだと思ってたから、「(ボストンから)クルマで1時間半」ってセリフを聞いて、ちょっと混乱した。
あとで調べたら、マサチューセッツ州にもマンチェスターがあるんだね。まったく知らなかった。

そんな海沿いの風光明媚な街で展開する、シブいドラマ。
現在進行形の物語に、時折過去のエピソードがフラッシュバックして挟まれる。
その構成から、いかにリーがこの街での過去に囚われているか、その出来事がどれほど悲惨だったのか…というふたつの状況がじわじわと観客の胸に沁みてくる。

葬儀費用の関係から安置所で冷凍されたままの兄の遺体、そしてその兄が残してくれた故障持ちの船…といった具体的な描写から、リーが抜け出したいマンチェスターから離れられず、過去と向き合わざるを得ないという、切実なドラマが形作られる。

劇的なことはほぼ起こらない。
過去と向き合ったリーだけど、新たな一歩も踏み出せてはいないかも。半歩…いや、0.3歩くらい。
若い頃だったらちょっと退屈に感じたかもしれないけど、中年となった今の眼で観てみるとこのくらいのバランスがちょうどいいというか、リアルに思える。

全体を見通すと、トラウマだらけの弟の背中を、亡くなった兄がそっと押したように思えてくるのが面白い。
そして、そんな”弟”を演じたのが、「ベンの弟」と言われがちなケイシー・アフレック。
さらに、そんなケイシーにぴったりのリー役を用意したプロデューサーが、ベンの盟友のマット・デイモン…というのも心にくい。ぬくもりを感じる。
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