KouheiNakamura

ガール・オン・ザ・トレインのKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

3.5
嘘と女とイノセント。


アメリカでベストセラーとなったミステリー小説を「ヘルプ 心がつなぐストーリー」のテイト・テイラー監督が映画化。電車の窓から人々の生活を眺めるのが趣味のレイチェル。自らが成し得なかった幸せを手にしている夫婦に羨望の眼差しを向ける日々。しかし、ある日彼女はその夫婦の不倫現場を目撃してしまい…。


近年、アメリカで流行るミステリー小説には奇妙な共通点があるという。一つは女性が主人公であるということ。もう一つはタイトルにガールがついているということ。ゴーン・ガール、ドラゴンタトゥーの女(原題ガール・ウィズ・ドラゴンタトゥー)、そして本作ガール・オン・ザ・トレイン。
女性を表す単語といえばウーマン、もしくはレディが相応しい。しかしいずれの作品も何故か少女を連想させるガールを用いている。主人公が20〜30代の女性だとしてもだ。何故か?

本作のパンフレットでもこのことが取り上げられているが、僕が思うにガールという単語から連想される純粋性・無垢性が作品のテーマの一つになっているからではないだろうか。男が幾つになっても夢を追い求める幼稚性を持ちあわせているように、女はいつまでも心の何処かでイノセンスを抱いたままでいるのではないか?それは本作の個性的な三人の女性の姿からも見て取れる。レイチェルはアルコール依存性で別れた夫を忘れられない。メーガンは過去のトラウマから肉欲に流される傾向にある。アナは不倫してまでも家族を得ようとする。それぞれに境遇は違えど、持ち合わせた純粋性は同じ。ミステリーという体裁を取ってはいるが、本作が最も訴えたいのはこの部分なのではないだろうか。

テイト・テイラー監督の演出は繊細で丁寧。役者陣も軒並み好演。ただ、個人的には前述した二作に比べると一段落ちる印象。その理由は後半のストーリー展開。意外性という意味では物足りなく、ドラマとしても疑問符がつく。
このストーリーならば、安易に悪人を設定するのは致命的だったのではないだろうか。名前は伏せるが、ある人物が悪いやつでした…で終わるのはテーマの矮小化であると思う。
また、ラストのレイチェルの台詞も…微妙。彼女たちの関係を絆という言葉で表しているが、果たして彼女たちに絆はあったのか?何とも飲み込みづらいラストだった。


総じて良作ではあるものの、何処かで勿体無い気持ちが起こる作品だった。
KouheiNakamura

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