踊る猫

The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめの踊る猫のレビュー・感想・評価

3.4
ソフィア・コッポラなりに試行錯誤しているのかな、というのは伝わる。キューブリック『バリー・リンドン』を思わせるような薄暗い幽玄な映像(相当自然光で撮ったのか?)。それはハッタリに堕してはおらずこちらをたじろがせる。それは良いのだ。だが、肝腎のストーリーは彼女お得意の「女たち」の痴話喧嘩/ストラッグルを中心に描くことに腐心し過ぎて、この映画に内包されている「男の凶暴性/女の狡猾さ」という対立から生まれるサスペンス/頭脳戦を緊張感あるものにさせることに失敗していると思う。平たく言えば全てが女性たちの都合の良いように進むので、こちらも弛緩した「女たち」の世界にまったり浸かることを余儀なくされる。だが、それが良い、という考え方もあり得るので厄介だ。『ヴァージン・スーサイズ』やその他のソフィア・コッポラ作品の「女たち」が好きだった人なら、そんな「女たち」をキューブリックが映したような上品で幽玄な映画(イヤミではなく)として楽しめるのではないか。ラストの音楽のドローンの使い方が巧いだけに残念。
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