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ソニータの会社員のレビュー・感想・評価

ソニータ(2015年製作の映画)
4.0
アフガニスタンから命からがらイランに逃れて約10年、15歳の少女ソニータは、ラッパーになるという夢を追い求め続けていた。しかし彼女の前には宗教、法律、貧困といった大きな壁が立ちはだかる。

先日サウジアラビアで女性の自動車運転が解禁されたことは記憶に新しい。しかし中東においては依然として女性の権利は認められていないことが多く、そのうち本作のテーマともなっているのが、「歌を歌うこと」である。生まれ変わるならマイケルジャクソンを親に持ちたいという程音楽が好きであっても、歌うことは恥ずべき行為なのである。

また、アフガニスタンには、結婚の際に夫側から妻の家庭へと多額の結納金を支払う慣習がある。その額如何は彼らにとっては死活問題であり、ある種人身売買とも言えるような、望まぬ結婚が横行していた。劇中ソニータにも、運悪く望まぬ縁談が舞い降りてくる。



監督はドキュメンタリー作品として、真実を撮しとるだけであるはずであった。しかしソニータの訴えもあり、製作陣は積極的にソニータの救済に介入していく。多額の融資による縁談の先伸ばし、ミュージックビデオの製作、はたまたNPOを通じたアメリカの学校への斡旋…。

ソニータ一人だけに焦点を当てるのであれば、歌の力で世界を変えた、感動的で見事なサクセスストーリーである。彼女が成功への階段を駆け昇る度に、何度も胸が熱くなった。
しかしそれは家族に対する裏切りでもある。残された家族や、施設の他の少女達は一体どうなってしまうのだろうか。「次は私がおばあちゃんに売られちゃうかもね。」幼い姪の何気ない一言が胸に突き刺さる。



こうした告発、啓発の取り組みはもっともっと広く知られるべきである。現代においては、我々が知り広めることで、彼女達を取り巻く環境は少しずつ改善に向かうはずである。
またそもそも、理不尽な障壁を自らの力で乗り越える一人の少女の姿を見て、遠い国のどこかで起きている、自分には無関係な問題などと、鷹をくくって平然としていられる人などいようか。

多くの方に見てもらいたい映画。
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