優しいアロエ

最後の追跡の優しいアロエのレビュー・感想・評価

最後の追跡(2016年製作の映画)
4.6
【過去鑑賞作品 47】

〈死か高水か〉

 メキシコ国境地帯の麻薬戦争を描いた『ボーダーライン』、雪の降るインディアン保留地に蔓延る事件を映した『ウインド・リバー』とともに、気鋭の脚本家テイラー・シェリダンの「フロンティア三部作」の一角に位置づけられる。

 この三部作に一貫するのは、「現代社会に置き去りにされたアメリカ暗部の実態を暴こう」という試みであり、現地で生きる人々をつなぎ合わせながら社会派なテーマを浮かび上がらせるモザイク演出の素晴らしさである。

 かつて白人は原住民のすみかを奪い、領土を広げていった。ここも150年前までは原住民たちの土地だった。しかし、今では白人のなかにも格差が生まれはじめている。同人種間の格差は『アス』と同系譜の、現代的かつアメリカ特有のテーマ。かつての加害者の首元にまで水は迫っているのだ。

 地獄に落ちた兄、水に飲み込まれまいともがく弟。どちらに転んでも厳しい現実『Hell or High Water』。その土地の実状を見てきた老保安官には、冗談を言って濁すことしかできないのであった。
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 撮影は言葉を失うほど美しく、名手ロジャー・ディーキンスが起用された『ボーダーライン』に比肩する。テキサスのだだっ広い荒野には長回しがよく似合う。朝・昼・夕・夜と、時間が経つごとにまったく異なる表情を見せるその土地の特性を存分に生かしている。

 クリス・パインとジェフ・ブリッジスの演技も素晴らしかったが、功労賞はベン・フォスターだろう。
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