滝和也

ブレードランナー 2049の滝和也のレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.0
降りしきる酸の雨。
静かに降り積もる雪。
赤き砂漠。
静謐なる世界に
響き渡る重低音。

ドゥニ・ヴィルヌーブ監督作品。

「ブレードランナー 2049」

大好きなのに、恐れ多くて未だ書けない「ブレードランナー」。子供心に植え付けられたディストピア。退廃し汚染された未来像に、人とは、命とは、神の定めた境界線を超えた人類への命題を叩きつけたハードボイルドSF傑作。その正当なる続編。

ブレードランナーの解釈は色々あるようですし、実は余り興味がないんです。あの世界観とハードなストーリー、ディテール部分に惚れてましたから。その2点からすると…。

新宿をモチーフとした日本語を中心としたネオン、猥雑さ全開の世界は一応継続でしょうか。少し整理されてしまってたかな。酸の雨は降ってますが。ドゥニ監督はこれに静かなる叫びの雪を加えましたし、サンディエゴの廃棄地区、赤き砂漠の廃墟のラスベガスと監督らしい美しい退廃的な世界を再構築してますのでそれはそれで充分楽しめました。

さてストーリーですが、ハードボイルドとして評価の高い前作と比しては辛い部分がありますが、僕は好きです。悲しくて切ない部分は伝わりやすくなってますよね。こう全てがダウナーなんで。ただ何よりもルトガーハウアーの様な強力なキャラが居ないし、アクション性にはかけてしまっているので平坦なんです。ロンググッドバイとかの古き良きハードボイルドになってますから、眠くなる方いますよね。尻切れ気味なラストも賛否あって然るべきでしょうし。

ただ監督はドゥニ・ヴィルヌーブで良かったと思います。どの作品を見ても、彼はブレードランナーが好きだと言う部分を感じていました。(そこが雑味になり気に入らない部分もありますが。)静謐と重低音の音の入れ方、俯瞰やロングショット、語りすぎない語り口、天候やナイト撮影。かなりの影響が各作品で見受けられ、今作に当然のようにピタリとハマっています。後、あの家屋が燃えるシーン、何かで見た気がして調べたら、タルコフスキーのサクリファイスのオマージュでした。学生の頃タルコフスキーにハマった時期もありましたのでなるほどと。SF作家としては外せませんよ(笑)

演者としてはライアン・ゴズリングのある種、無表情かつ硬質的な演技はKと言う存在にハマっていますし、異論はないです(笑) いつもどこか悲しげなんですよね、顔の作りかな(笑) ハリソン・フォードは大好きな俳優さんです。彼は若かりし頃の大スター。もうちょい出てくれればなぁ(T_T) でも今作で画面を食ったのはアナ・デ・アルマスですね。その演出により、彼女は至高の存在になっちゃいましたよ(笑)あのオチも含めて。別の作品も見たくなっちゃう。オタクの憧れの上、日本人好みの顔でしょう。

Kの物語としては、これで良かったし、正当なる続編としてはありだと感じます。ただ今後、粗製乱造されるのは反対です。日本アニメに素晴らしい影響を与えた作品であり、その世界をエイリアンのようにはしてほしくない気持ちは強いですね。
滝和也

滝和也