踊る猫

カフェ・ソサエティの踊る猫のレビュー・感想・評価

カフェ・ソサエティ(2016年製作の映画)
3.7
洒脱な映画だなと思った。年の功、というのだろうか。ギラギラした野心を漲らせてこちらにアプローチしてくる脂ギッシュなところがなく、それでいて枯れているというのとも違う、落ち着いたアプローチでこちらをストーリーに引きずり込む。ジャズと映画スターによって彩られたその世界は、一見人畜無害なようで実は巧みに「死」を隠し味として含有している(ギャングたちによって呆気なく死ぬ人々、あるいはキリスト教の教え、等など)。「死」の前には人間は平等であるということ、そしてこの人生は予測不可能なシロモノであるということ、夢は儚いものであるということなどが、説教臭くなくこちらに説かれる。老獪なウディ・アレンが見据えた境地がここにある……と書くのはもちろん早合点というものだが、しかし凡百のラブ・ストーリーにはない骨太の人生哲学が、誰にでもわかるように絵解きされるのはやはり知性の賜物と言うべきなのかもしれない。だが、やや頭でっかちに過ぎる気もする。小説だとゾラやフローベールにも似た、フランスの風俗小説っぽいワイワイと賑やかな雰囲気は好きなのだが……もうひとつパンチが欲しかったかな、と思った。
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