ふしみあい

ラビング 愛という名前のふたりのふしみあいのレビュー・感想・評価

4.0
好きだけどここが好き!というような突き抜けた好きを感じられなかったような気がする。

「異人種間の結婚を禁止する法律と戦った夫婦の物語」というテーマで、ラビング夫妻の悲劇!からの勝利!が壮大に描かれているかというと、そうではない。
夫婦が夫婦になるまでの過程や故郷に帰れないことの物理的な悩み、お互いを尊重している様子などがまるでドキュメンタリーのように淡々と描かれる。
それがこの映画を一段上質なものにしているように感じる一方、夫婦の闘いそのものが希薄になっているような気がした。そこに重きを置いていないのかもしれないし、ただお互いに対する愛を貫いただけのラビング夫妻にとっては、表面的なものなのかもしれない。
でも少し淡白すぎてそこまで絶望や苦悩が見えてこなかった。実際は本当に苦しかったんだろうけど。そこがこの映画の好きなところでもあるし、物足りなかった部分でもある。

主演お二人の演技が本当に自然で、セリフが極端に少ないぶん、目や表情や仕草で語る場面が多い。アメリカはバージニア州のだだっ広い野原や50年代の車、ファッション、小物類。それらがすごく丁寧だった。
小柄なミルドレッドの服とか仕草がめちゃくちゃキュートで、それに対して「俺、不器用すから」なリチャード。この夫婦、すごく萌える。
そしてジョエルエドガートンの仕事のレンガ塀の高さ全然変わらない笑

淡白すぎるような気もしたけどやっぱりすごく好きな映画だった。細かさとか繊細さとか丁寧さが感じられて、劇場で見られて良かったと思う。