タキ

ラビング 愛という名前のふたりのタキのレビュー・感想・評価

4.0
1958年のアメリカバージニア州。まだほんの60年前、州法により異人種間結婚が認められていなかったということにまず驚く。黒人の妻ミルドレッドはこの州法を覆し自分たち夫婦だけのことではなく同じ立場に置かれている人々をも救いたいと思いはじめ、白人の夫リチャードはそんな妻の行動を積極的に反対はしないものの、10年もの年月悩みながらも家族を守りたいの一心で裁判を続けてきた。このモチベーションの違いが温度差を生み、ともすれば消極的なリチャードは憲法を変えるようなことまでを望んでいないようにも見え、それは彼が白人がゆえに?との思いが見る側にも芽生える。黒人の友人数人とリチャードが同席するバーのシーン、多くを語らないリチャードの心情がストレートに伝わる大事な部分で、視聴者の疑念の答えとなる。このシーンがおざなりの伝記映画を超える深みを見せている。「お前なにやってんだよ。自分で自分の首締めてる。黒人の苦労が少しはわかったろ?お前は白人だ。普段は黒人とつるんでも仕事に行きゃ白人だ。でももう違う。肩身がせまいだろ?お前はもう黒人だ。バカめが。それでもおれらに比べりゃお前はマシなんだ。お前には逃げ道がある。女房と離婚すりゃ済む話だ。」このセリフを怒りと悲しみに満ちた表情ですべてを受け止めるリチャード。このシーンがあるからこそコーエン弁護士に言った「俺は妻を愛していると伝えてくれ。」の言葉のもつ深い意味が伝わる。
ただ愛する人たちと暮らしたいだけというラビング夫妻のあまりにささやかな願いから始まった愛の物語だった。
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