あーや

モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由のあーやのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

男女のリアルな恋愛模様を描いた映画作りでフランスの横に出る国はないでしょう。「MON ROI(私の王様)」です。マイウェン監督の映画は初めて観ました。

主人公のトニー(エマニュエル・ベルコ)がスキー場で靭帯損傷の怪我を負って身体と心のリハビリをする”現在”と、ジョルジオ(ヴァンサン・カッセル)との恋愛に燃え上がり衝突するまでの”過去”を交互に観せるストーリー展開です。
不幸真っ只中の現在と幸せに浸りきっている過去。あえてふたつのストーリーに大きな幸福の差をつけて観せる効果のお陰で、観客も次のシーンが気になって映画に引き込まれていきますね。
そしてこの差は映画の中盤から徐々に逆転していく。
施設でリハビリに励む現在のほうがリハビリ仲間達と楽しく笑いあっているのと反対に、過去の方は段々とジョルジオとの衝突が多くなり喧嘩の果てに自殺未遂をするまで追い込まれてしまったトニー。
トニーが子供を授かってから明らかになってゆくジョルジオのどうしようもないダメっぷりったらもう・・・。別居、度重なる浮気、債務不履行による差し押さえ、コカイン依存症やらが原因でトニーがどんどんやつれて壊れていく様が見ていて辛かった。。ついに離婚を決意したトニーの「愛も苦しみもいらない。平坦がいいの」という台詞が印象的でした。愛する女性にこんな台詞を言わせるまで苦しめたらあかんよ。。たくさん笑わせてくれる恋人としてのジョルジオは素敵なのに、次々と明らかになる事実に腹が立ってきたのは私が女だからなのでしょうか。私自身もクズに惹かれやすい質なので、悲しいかなトニーに感情移入するのは結構早かったです。あとは以前ジョルジオに似たタイプのひょうきんなフランス人男性と一時期付き合っていたのでそのせいなのかもしれません。(レストランでの人目を引く派手なおふざけシーンのようなことを、私を笑わせるためにほんまに実践してしまうような変人でした)
愛し合っているのに一緒にいると互いを傷付けて幸せにはなれない2人の選んだ結末は、かつての愛の余韻を仄かに残した終わり方でした。2人が運命の相手同士であれば、きっとまた心が惹き付けられて結ばれるはずですからね。今はこの愛の形で落ち着いたのでしょう。

ジョルジオを演じるヴァンサン・カッセルの顔はあまりタイプではなかったのですが、主人公のエマニュエル・ベルコをあらゆる局面で苦しめる色男を演じている内に段々とセクシーに見えてくるのだから不思議。私もトニーと共にジョルジオへ惹かれつつあったので、トニーの目線で彼を見つめるラストシーンはとてつもなく切なかったです。久しぶりに見るジョルジオの横顔、唇、顎、首元、手つき、目元、首元、、愛する人の些細な仕草や顔のパーツをうっとりと目で追ってしまうのは仕方の無いことですね。過去の幸せだった日々を思い返していたのでしょうか。その目線には以前の狂いそうな熱は帯びておらず、ただ優しい目で彼のことを愛おしく見つめていたんですよね。
最後までジョルジオがトニーを幸せにすることができなかったのは悔しいのですが、ジョルジオがそこまでトニーを惚れさせてしまっている事もまた事実。。うう、切ない・・・(T_T)
登場人物たちの心の揺らぎを丁寧に演じられる俳優達を起用して複雑な恋愛を描き切った素晴らしい作品でした。
そんな複雑なストーリーの中で唯一はっきりしているのは、2人の息子くんの笑顔に癒された事です。あの舌っ足らずなフランス語にもキュンキュンしました!超mignooon♡♡
あーや

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