Kamiyo

マリアンヌのKamiyoのレビュー・感想・評価

マリアンヌ(2016年製作の映画)
4.2
2017年 ”マリアンヌ” 監督 ロバート・ゼメキス
脚本 スティーヴン・ナイト

ロバート・ゼメキスが、「カサブランカ」のようなラブロマンスとスパイサスペンスを融合したスタイルで作った。
古きよき時代のアメリカ映画を現代風にアレンジしたと言えば良いだろうか。

戦時下の大メロドラマ、いいですねぇ古典的とも言える作りで、まさに「カサブランカ」の趣。
第二次世界大戦中のフランス領モロッコ
ナチが我が物顔で占領する、カサブランカでのミッションでフランスの美人レジスタンス マリアンヌ(マリオン・コーティヤール)とコンビを組むことになったカナダ人英国諜報員マックス(ブラッド・ピット)は夫婦役を演じて敵の懐に入り、ドイツ軍将校暗殺のミッションを成功させるが、作戦中に愛しあうようになった2人
砂嵐の最中に狭い車の中で、明日に控えるミッションで
生き残る確率が40%以下、まさに我が身を挺してのスパイ活動を前に、突然互いを求め合うシーンをカメラはゼメキスらしく凝りに凝って360℃ぐるりと車内で絡み合う2人を見つめ続ける・・・。

二人はいつしか本当の恋に落ち作戦終了後めでたく結婚、
「作戦で一緒になった男女は続かないぞ」などと仲間に
言われながらも
空襲の最中のロンドンで娘も無事出産と、
順風に愛を育んでいくが・・・
そんな折、軍の上層部から衝撃的な言葉がマックスに告げられる。「マリアンヌは、ドイツ軍のスパイの疑いがある」というのだ。心揺れるマックス。

派手なアクションはないものの、妻にかけられた
スパイ疑惑に狂おしい愛が切なく胸をうつ。
マックスとマリアンヌは作戦のため、夫婦を演じる。
マックスはパートナーと関係を持つと作戦が失敗すると、マリアンヌを抱かない。
マリアンヌは作戦の失敗はセックスではなく
感情という。
この感情こそが本作のテーマであり
マリアンヌの愛がサスペンスフルにさせる。

マリオン・コンティヤールが演じる美しいスパイ。
腕がよくても、愛を欲する弱き女性である。
これは戦争がもたらす悲劇であり
別の形でマックスと出会っていたらと思います。
「感情は嘘をつかない」というマリアンヌの言葉が切なかったです。
ラストの刻一刻と変わる状況を読み取り微妙に表情を変えるマリアンヌの顔のアップとのカットバックの見事な畳みかけにはゾクゾクと映画的興奮が最高潮に・・。

スパイの嫌疑もかかる妻と子を守ろうとする男ブラピ!愛する子を守るために命令に従っただけなのに・・・愛。

物語の結末も含めてなんとなくシェイクスピア的な悲劇。
心情描写がメインのラブストーリー

前半のモロッコでの二人の出会いから牽制しあいながらも
次第に情を通わせていく描写が素晴らしい。
この二人の濃厚な愛が描かれているから後半の彼女への疑惑が観客の我々にも重くのしかかってくる。
夫マックス同様にどうか間違いでありますようにと思わざるを得なくさせていく。
マリアンヌの妻としての幸せと母としての喜びを湛えた表情が我々に疑惑が嘘であることを切望させる。
しかしストーリーはマックスにとっても観客にとっても冷酷な結末へと導かれていく。
そこに戦争の非情さが立ち上がってくることになる。

偽りの愛から真の愛に。
戦争真っ只中、自分の愛する人が敵国のスパイだったら??
…あなたはどうしますか?
時代が人の情を奪い、殺す。
今こうして何気ない毎日を過ごせるのがどれだけ幸せなことだろうか。
マリアンヌ、マックスの世界観とても好きだった。
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