[海へ]
「海を見てみたい」
序盤から、ポスターやパッケージから想像するようなサスペンスではない事がすぐにわかった。
まずこの映画は映像の繋ぎ方が独特である事に気がつく。歩いてるだけなのに同一ポジションで人物を飛ばし飛ばしフェードで繋いでいたり、右から左へ画面がフィルムのコマのようにスクロールしたりする。
こういった演出は「ポップ」な雰囲気で使われる事はよくみるけれど、何か叙情的ともいえる雰囲気で見せていた事に驚いた。
美しい女性と、美しい旧車。
これらが重なると、映画的「絵力」は嫌でも感じてしまう。音楽使いなども何かセンスを感じさせ「オシャレ」というワードがそろそろ頭をよぎる頃、序盤から感じていた「ある違和感」が大きく際立ち始める。
「オシャレ」なパッケージに包みこんでいるが、その本質は「デヴィッド・リンチ」的とも言える悪夢に吸い込まれる感覚の方が強かった。
序盤から念入りに様々な事が進行していた事もわかり、一応オチもハッキリと落ち着くけれど、もう少し「抽象的」に捉えて終わらせて見るのも面白いかもしれない。
なぜなら、
独り海へと向かおうとする人間は、
いつも繊細さに「危うさ」が同居しているように感じているからだ。