Tako

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。のTakoのレビュー・感想・評価

3.8
モダンホラーの巨匠、スティーブン・キング原作のホラー要素のある『スタンド・バイ・ミー』的な作品。
恐怖演出のマンネリ感が欠点ではあるものの、子ども社会でも感じる生きづらさや甘酸っぱい感情などの表現は見事でした。『スタンド・バイ・ミー』が合う人にはオススメです。

ストーリーそのものはシンプルで、ペニー・ワイズと呼ばれるピエロの姿をした化物が子どもを襲い、それに少年少女たちが立ち向かうというもの。
ペニー・ワイズは子どもにしか見ることができず、大人を頼ることができません。なおかつ恐怖を与えることがこの化物にとって非常に有利になるため、とにかく子どもたちを怖がらせてきます。1990年の過去作では、ピエロ恐怖症になってしまった子どもが現実でも増えてしまったとか。

ほとんどの場合、気味の悪いクリーチャーに変身して怖がらせてきますが、デザインはなかなか秀逸です。怖がらせる対象の心理を読んで、より効果的に怖くなるように工夫しているので、キャラクターに感情移入すればするほど一緒に怖がることができ、映画体験としては優秀なギミックです。

ただし、その演出も何度も繰り返されると新鮮さがなくなってしまい、あぁまた化物が出てくるのね、と醒めてしまうのが難点です。
しかもメインのキャラクターが7人もいるので、後半では恐怖もすっかり薄れてしまいました。
「ホラー映画」としてのクオリティーはあまり高くないので、ホラー好きな人からするとややパンチ力の低い感が否めないでしょう。

他方で、青春映画としての色合いは素晴らしく、それぞれのキャラクターの抱えている悩みや苦労、不安などをしっかりと描いています。どうあがいても人気者にはなれず不当な扱いを受けている彼らが次第に絆を強くしていく様は見ていてぐっとくるものがあります。
『スタンド・バイ・ミー』や『ストレンジャー・シングス』が肌に合う方はこの青春成分だけでも十分に楽しめるでしょう。

原作と比較すると、大人パートが完全に省かれている(パート2で描かれるとのこと)ので、それぞれの時間軸が交差していき、真相に近づいていくというプロット上のオモシロさ、ワクワク感が完全になくなってしまっているのは大きなマイナスポイントです。
長くなりすぎるという事情は理解できますが、やはり原作を構成する面白さをぶっこ抜いてしまうのはやや残念です。

全体のバランスとしては満足感を得られますが、一つひとつの要素が弱く、中途半端な印象を抱かせる映画でした。
もう少しどこかに特化させるとより良いインパクトを残せたのではないかなぁと思うばかりです。
ビル・スカルスガルドの表情芝居はとても好きですが!
Tako

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