Tako

The Witch/魔女のTakoのレビュー・感想・評価

The Witch/魔女(2018年製作の映画)
2.5
韓国発のSFアクション映画。
遺伝子操作や秘密組織、バカでかい銃を自在に扱う少女などの題材が好きな人にはオススメ。でも完成度としてはいまいち……

幼少期に過酷な環境で暮らしていた少女は記憶を失い、平凡な日常を送っていた。友人の勧めで出場したオーディション番組をきっかけとして、少女の人生は一変し、過去との対決を余儀なくされる。

といったあらすじですが、そこまで凝ったものではなく割とスタンダードなストーリーラインです。ありがちといえばありがち。
少女の過去そのものをまるっと秘密にしている訳ではないので、そういった類のストーリーの経験値があれば、すんなりと理解することができます。
見やすい反面、とくに驚くべきことがないのが残念なポイントです。
どんでん返しのような、ひっくり返す要素があるものの、読み筋なのでそれほどのインパクトはなし。
辻褄はあっているけど、まぁさして面白くはないよね、といった具合に落ち着いてしまいました。

というのも、主人公の少女に主たる目的が提示できていないのが問題点でした。
もちろん母親の病気をどうにかするためにお金が必要であり、それを得るために行動する、というのがメインの動きですが、これも少女自身が見つけたのではなく、友人から紹介されたという偶発的なもの。
もっとモチベーションを『お金を稼ぐ』に向けていれば、観客としても彼女への共感や応援心が芽生えてくれそうですが、いまいちそのあたりがはっきりしないのが難点でした。
ストーリーをひっくり返そうとするばかりに、メインストーリーに引力を持たせられないのは実力不足といった印象が否めませんでした。

ストーリーよりも圧倒的に弱かったのが、キャラクター造形です。
どれもどこかで見たような感じ、それっぽいような雰囲気のキャラクターばかりで、魅力がほとんどありません。
実力のある出演者ばかりにも関わらず、まったく登場人物に魅力を感じられなかったのは、ひとえに脚本の力不足ゆえでしょう。
動機や感情の厚み、共感性などにおいて深い洞察がなく、終始「それらしい」言動をしているばかりでした。
作り込みの浅さはセリフにも如実にあらわれており、どれもセンスを感じられないものばかり。だた情報や状況を提示している言葉にすぎず、人物の背景や性格、情緒を感じさせてくれるセリフはほとんどありませんでした。

アクション面についても、それほど新しい表現があるわけでもなく、いわゆる超能力バトルをひとしきりやったという感じのもの。
この作品ならではの独自性や外連味がちょっとでもあれば良かったのですが、こちらもやはり「それらしい」感じで終わってしまいました。

ストーリー、設定、キャラクター、映画性、どれをとっても「それらしい」で終わってしまった非常にもったいない作品といった印象でした。

ただ、これらの設定―ー遺伝子操作、超能力バトル、銃撃戦などの要素がそれほど浮いていないのには驚きました。
というのも、もしこの物語が『日本』だとしたら、もっと荒唐無稽なものになったことでしょう。
超能力バトルはまだしも、こと銃撃戦においてはこれっぽっちも説得力が与えられず、さらにお寒いものになったに違いありません。
韓国という国だからこそ『戦争・戦闘』にリアリティのある背景が透けてみえ、遺伝子操作・超能力・銃撃戦が成立させられたような気がします。

キャラクターの背景だとか、感情だとかはどうでもいいんだよ! とにかく銃をぶっ放して、恰好いいアクションが見たいんだ! という方には、アジアという舞台で見れるアクションものして十分に楽しめるので、気になった方はぜひ視聴してみてください!
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