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LOGAN ローガンのTEPPEIのレビュー・感想・評価

LOGAN ローガン(2017年製作の映画)
4.7
「X-MEN」シリーズはアメコミの中でも長寿シリーズであり、各作品ごとの波はあれど、17年も続いている立派なシリーズである。そしてその中でも極めて人気のあるウルヴァリンを演じ続けたヒュー・ジャックマンと、プロフェッサーXを演じたパトリック・スチュワートは本作にてその役目を終える。なぜ、本作で彼らの役名がそれぞれ''ローガン''、そして''チャールズ''なのか。いまこうして言える事は「LOGAN」は確実に…常識を覆す、ありとあらゆる映画体験をアメコミ映画の壁を越えて味わうことのできる映画である。僕の中でX-MENはキャラクター映画であった。基盤としてはミュータントと人類の共存がテーマであり、キャラクターの面白みが醍醐味である、それがX-MENであると考えていた。しかし、本作はキャラクター映画の枠を完全に超えた。いや、シリーズ中最もエキセントリックである。ウルヴァリンことローガンは長年の戦いで心も身体も疲れ果て、その背景は詳しくは語られないが身体中の傷と彼の1つ1つの表情が物語る。ミュータントが滅んだ世界でチャールズと共に生きる目的もなく過ごす日々。彼らは決してヒーローとしては描かれない。そもそもこの映画にヒーローはいない。X-MENとして戦った彼らは多くの犠牲を払い、正しい事をしても人殺しの烙印を押され生き長らえてきた。多大な犠牲を払って、愛する者も、自らの力も制御できぬチャールズ・エグゼビアを演じたパトリック・スチュワートは10キロの減量だけでなくその役に命を吹き込んでいる。ミュータントの希望となるローラを演じた若干12歳のダフネ・キーンの演技力も圧巻である。実はこの子は俳優のサラブレッドであるというお墨付き。本当に世界観が確立されている。ここまでミュータントにとって絶望する世界は中々描けない。しかも「本気」だ。R指定ながらの残虐描写と人間ドラマ。非常に悲しく、愛らしく、ロードムービーを混ぜた素晴らしい映画である。常にある人の日常こそがミュータントの彼らにとっての理想であり、そして何よりの幸せなのである。しかし葛藤するローガンは「俺が愛した人は傷つく」という。この映画はローガンという1人の男の文字どおり生き様を描く。鳥肌ものである。容赦ないアクションシーンと、美しく広大な映像にマッチするスコアの素晴らしさ。前作に続いての登板であるジェームズ・マンゴールド監督の手腕はむしろこっち。ヒュー・ジャックマン、アフレコの演技をご覧になった人も多いだろう。彼自身が全力を注いだと言う最後のローガンはまさに、満身創痍である。これまでのX-MENとは一線を画す。
総評として、「LOGAN」は「ダークナイト」以来の衝撃的なアメコミ映画である。決してキャラクター映画ではない。本作は壮大なドラマとシンプルなストーリーテリングと多くを語らぬバックグラウンドを上手く融合させ、これまでになかったX-MEN映画を構築した。しかも冗談抜きで涙が止まらない。ヒュー・ジャックマンのローガンは誰にも超えられない。それだけは確実にわかるだろう。
''極上の本気''である。
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