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『ルート1 USA』に投稿された感想・評価

菩薩
3.8
始点は終点であり、終点は始点であると、なんだかヨルタモリを思い出したのは私だけでしょうか。アメリカ人とは、そしてアメリカとは、始まりを南下し終わりを見つけ、忘れてたいたものと忘れかけていたものを再発見する旅とでも観るべきなのだろうか。発見に始まるアメリカの歴史、歴史は浅いが国土は広く、アメリカを成す構成要素も多い。完成に至る過程で抜け落ちていく人々がおり、完成に至り追いやられる人々もいる、カメラに映る揺らぎこそがリアルなアメリカなのか。4時間のロードムービーとしてかなりダラダラ観たが、パスポートも持たぬ身としてはこのくらいのことりっぷが調度良い。溶け込むでは無く奪い作り上げる国民性、その対称を行くドクの未来とは、そして現代アメリカの未来とは。
本日のアカデミー賞発表会で「ワン・バトル・アフター・アナザー」(2025)がオスカー受賞したのを記念し、関連する本作をレビュー。

1980年代末期のアメリカを北端から南端まで国道1号線に沿って縦断するドキュメンタルな社会派ロードムービー。監督はインディペント作家の草分けロバート・クレイマー。

10年以上の海外生活を経てアメリカに帰ってきた医師 “ドク”(ポール・マクアイザック)は、アメリカを再確認するためカナダ国境の町から南北を貫く最古の国道“ルート1”を南下する旅を始める。同行したカメラは、旅の途中で出会う人々や出来事、変わっていく風景をリアルに捉えながら1980年代末期のアメリカの問題を次々と浮かび上がらせていく。。。

役者が旅する主人公を演じつつ、アメリカ各地の模様をドキュメンタリーとして捉えていく新手法。役者が取材者の意志を顕在化するので、一般的なドキュメンタリーよりも非常に観やすかった。

本作の翌年に出版されたのが「ワン・バトル・アフター・アナザー」の原作となったトーマス・ピンチョンの小説『ビンランド』(1990)。冷戦終結直前のアメリカの病理を、フィクションで表したのが『ビンランド』であり、ドキュメンタリー映像で記録したのが本作と言える。

ちなみに『ビンランド』主人公ゾイドの元妻フレネシは、カメラを武器に闘争する革命的映画製作集団「24fps」に属していたという設定。その「24fps」のモデルが、本作のクレイマー監督とポール・マクアイザックらが若かりし頃に創設した左派映像製作集団「Newsreel(ニューズリール)」である。

本作は旅を通して当時の経済格差や黒人差別問題、そして福音派の原理主義と急進的愛国主義の癒着が炙り出される、保守権力による黒人差別や同性愛者差別は「ワン・バトル・アフター・アナザー」でも描かれた通りだった。同作の40年近く前から問題は変わっていないことをあらためて認識した。

旅を通して、アメリカの開拓と先住民虐殺、南北戦争、第二次世界大戦やベトナム戦争などの史跡を巡る。地図を見ながら観賞したので、あらためてアメリカの地理と歴史を学ぶこともできた。なお、主人公ドクは父親が原爆投下後の日本に調査に行っていた設定になっている。

左翼出身のクレイマー監督とポール・マクアイザックのコンビなので、ドキュメンタリーの視点は常に社会的に抑圧された弱者に向いている。ただし二人は出世作「アイス」(1969)で自らの革命闘争の限界を既に総括しており、問題の多い社会でどのように生きていくか=本作の結末は深い視座が感じられるものだった。

何しろ4時間超の大作なので、メモ書きだけでノート一冊使ってしまった。しかし脳死状態の日本社会に辟易している中で、真っ当な問題意識を携えたこのロードムービーを見ている間は孤独な気分を紛らわすことが出来た。
ワイズマンのジャクソンハイツを見て何かに似ていたなと思ったけど、おそらくこの作品のことだろう。

で、アメリカのルート1を辿るフィクションとノンフィクションの中間的なこの作品がジャクソンハイツとどう似ていたかというと、まず三時間超えの長尺ということは当然として街や自然を撮った風景描写が良いのに人物描写が今一つに感じられたという点も印象として似ている部分だった。

そして何故今一つに思えたかと考えてみると、やはり人物との距離感が心理的にも物理的にも近い場面がどちらも多かったのが理由と思われ、自分が風景と同化したような人間の撮り方か人物画みたく単なる被写体のように人間が撮られている映像が好きということに加え、風景描写が逆に距離を置いて撮られたものが多かったというもあり、好み的にも相対的にもそこじゃ良いものとは思えなかった。

映像と一緒に言葉を録音する必要があるからあまりカメラを離せなかったというのもあるんだろうけど、人物を制御できないが故にやはりドキュメンタリー的な側面のある作品でロメールや小津のように絵画的な人物描写は難しいのだろうか。

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