のん

奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガールののんのレビュー・感想・評価

4.2

楊貴妃、小野小町、クレオパトラ、オタサーの姫


いくら天下の東宝とはいえ、これだけ際どい内容の作品をメジャー作品として封切るというのは相当リスキーだったと思う。



後半の展開などはほとんどホラーとも言ってよい無茶苦茶な映画だが、さすがにそこはバランス感覚の優れた大根仁監督。

別の人が撮ればウェットな展開になりかねない物語を、エロく、エグく、されど不快にならない絶妙なバランスでエンターテイメントを成立させている。


いつの時代も、どこにでもいる「狂わせガール」と奥田民生に憧れる編集者とのちょっと危ない物語は大根監督の傑作「モテキ」を彷彿とさせ、ポップでハイテンポな展開に心踊さられる。

一方でリリーフランキー演じるフリーのライターや天海祐希の女社長など出版業界にいかにもいそうな危ない人たちを生々しく描いていて、このあたりは「バクマン。」「SCOOP!」の取材の賜物なのかも。


妻夫木聡が奥田民生に憧れる、という「それホント?」とツッコミたくなる設定だが、民生に憧れながら翻弄される主人公を愛おしく演じていて好印象。



本作最大の魅力ともいえる狂わせガールこと水原希子は、確かに男を狂わせる何かを確実に持ってることをこの作品で完全に理解した。

大根監督はいま日本でいちばん女優を魅力的に撮れる監督なのだと思う。長澤まさみ、麻生久美子、小松菜奈に続く大根マジックが炸裂している。



こんなにもはちゃめちゃなのに、映画の鑑賞後はなんとも言えぬ切ない気持ちに。
のん

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