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手紙は憶えているのharuのレビュー・感想・評価

手紙は憶えている(2015年製作の映画)
4.6
『サスペンスのハラハラ×認知症のハラハラ』
その空気感を作り出しているのは見事としか言いようがない。

妻を亡くしたばかりの、身体は動くけれども認知症のゼブと頭ははっきりしていても身体がもううまく動かなくなっているマックス。
2人の目的は「アウシュビッツで自分たちの家族を惨殺した男を探して復讐すること」
その男は他の男の戸籍に乗り換え今も普通に生活をしているという。
認知症のゼブの旅を支えるのはマックスが書いた手紙。彼は忘れるたびに手紙を読み、自分の使命を思い出し、目的を果たすために旅を続ける。


主人公の目的や背景は序盤ではあまり説明されず、ストーリーが進むに連れて徐々に明らかになっていく。
老人のスピードの緩やかさに合わせて、
ゆっくりとそしてシンプルに話が進んでいくため、じっくりと想像力を働かせながら鑑賞することができる。

脇役ながらも相変わらず強烈なインパクトを残すディーン・ノリスの安定感に一瞬心を持っていかれるが、
それ以降さらにそれを超えてくる展開がたまらない。あまり煽らない方が良いのだろうが、衝撃の結末という表現が最もふさわしいのは間違いない。

戦後数十年経ってからの話だけれど、
キラキラした子供たちの姿が何度も強調されているのは、戦争の残酷さを風化させず明るい未来へと繋げていくための希望を表現しているのかもしれない。

94分というやや短めではあるが、
サスペンス好きにはぜひ勧めたい非常に良質な作品。
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