ミチ

手紙は憶えているのミチのレビュー・感想・評価

手紙は憶えている(2015年製作の映画)
4.2
かつてアウシュヴィッツ収容所で一緒だった老人2人が、家族を殺された恨みを晴らすため、その犯人である元ナチスの“ルディ・コランダー”に復讐を果たそうとする物語。


近年様々な形でホロコーストやナチスドイツを扱った作品が制作されているが、この作品も新たなアプローチでホロコーストを描いている。

主人公は初期の認知症を患った90歳の老人ゼブ。

彼は眠ると記憶を失ってしまい、目覚めるたびに亡き妻の名を呼び探してしまう。

そんなゼブに、同じ老人ホームで暮らす友人マックスが手紙を渡す。

そこには、かつて自分たちの家族を奪った元ナチスの“ルディ・コランダー”を探し出し、復讐するという計画が書かれていた。


老人の復讐劇というのは、実に切ない。

目覚めるたびに記憶を失くし、妻を探すゼブの姿は弱々しく頼りない。

しかし彼は過去の恨みを確かめるように、何度も記憶を失っては手紙を読み返し、復讐の炎を消すまいとする。

まるでそれが、最後の生きる望みのように。


サスペンスとしてもよく出来ているが、ストーリー性がさらに素晴らしい。

ラストに驚いたあとには、自分を見つめ直したくなるようなメッセージが浮かび上がる。

そして、歴史の傷跡の深さを思い知る。


クリストファー・プラマーをはじめ、ベテラン俳優たちの重みのある演技も素晴らしい。

直接的なホロコーストものが苦手という人にも是非観てもらいたい作品。
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