みーちゃん

哭声 コクソンのみーちゃんのレビュー・感想・評価

哭声 コクソン(2016年製作の映画)
4.1
前二作とはジャンルが違うようで怖そうで、観るのを躊躇していたのだけど、ナ・ホンジンは三作とも観ておきたくて。結論から言うと引き込まれた。まだ終わって欲しくないと思ってしまった。

でも國村隼の見た目の変容はやればやるほど興醒めするし、私にはtoo muchだった。言い換えると、そんな直接的な描写や表面的な事柄は何の確証にもならず、論点はそこではない。と感じた。

それが主人公ジョングが渦中に巻き込まれて以降、徹底して貫かれている。だから観客も、いつの間にか深い所で巻き込まれているのだ。そこが不穏で気持ち良かった。こんな世界で一つだけ確かなのが「何としても娘を救う」なのがいい。

◇私が特に考えさせられたシーンは二つ。ここから本編に触れます。

一つ目は祈祷師の儀式の最高潮。苦しむ娘を見て、散々迷いながら結局は中止させるところ。ここで止めたらこれまでの祈祷が全部無駄になるだけでなく、娘が受けたダメージだけが残ってしまう。とも思えるし、あれ以上続けたら、娘の身体が張り裂けていたかもしれない。とも思う。

二つ目は終盤のクライマックス。自宅近くでムミョンと対峙した際「鶏が三回鳴くまで家に戻ってはいけない」と言われ、散々迷いながら、結局は二回目で家に戻るところ。いっそ最初から戻った方が良かったのだろうか。それとも三回待てば結果が違ったのだろうか。

何を信じればよいか、どう行動すればよいか、誰も答えを与えてくれない状況下で、最後の瞬間まで諦めずに最善を尽くしたようにも見えるし、最も中途半端な最悪の決断をしてしまったようにも見えて、本作のテーマを象徴するエピソードだと思う。

クァク・ドウォン、ファン・ジョンミンは勿論、娘役のキム・ファニ、助祭役のキム・ドユンも良かった。