あなぐらむ

レイプ・ショット 百恵の唇のあなぐらむのレビュー・感想・評価

3.9
主演の水島美奈子が苦手なのだが藤井克彦作品という事で。
脚本が「殺人遊戯」の播磨幸治で、ちょっとしたハードボイルド編に仕上がっている佳作だった。藤井克彦演出は東映セントラルを意識してる感じもある。

当時日活撮影所内でよく撮影していたホリプロスターの山口百恵を向こう回して、よくこんなタイトルつけたなと感心する(「百恵は時代のトレンドだった」)。しかもネタはアイドルの覚醒剤ゴシップ。このアイドル役が水島美奈子なんだが、後半どんどん良くなってくる。それにも増して、三番手の山口美也子が蓮っぱな場末の女で素晴らしい。

主演のトップ屋を演じる阿部徳昭は、松田優作みたいなアフロヘアとヒゲが印象的で、悪党に徹しきれない男の哀しさを好演。
堀田真三さんが凶悪なアイドルの用心棒で、大暴れしてアクション度を上げる(セットを壊すし)。飛鳥裕子は華をそえる程度。

後半の狭い地下室内のセットならではの奥行きを活かした藤井演出の画面構成が見事。レイプ、SMモノとアクション映画の親和性を強く感じさせる。タイトルバックのアップショットの多用は監督のオハコか。70分に満たない尺に映画の面白味が充満していた。隠れた名品。