tetsu

シュガー・ラッシュ:オンラインのtetsuのレビュー・感想・評価

4.3
「現代のディズニー作品を代表する一作。」

公開初日、授業終わりに速攻で映画館に行くと、まさかの舞台挨拶回で菜々緒さんが登場。
今回は折角なので、本編の感想(前半)と舞台挨拶のメモ(後半)の二部構成でお送りします。

"ヴァネロペ"が住む"シュガーラッシュ"の世界の危機によって、インターネットへ行くことになった彼女とその大親友の"ラルフ"。
そこは何でもありの夢の世界、新しいことがありふれた世界に心をときめかせる二人だったが、めくるめく冒険のなかでその友情に迫り来る影が...。

あまりに前作が完成された作品だったため、今回のハードルは割と下げて観に行きましたが、後日譚として充分満足できる一作でした!!
個人的には序盤に登場する"ディズニーの元祖アーケードゲーム"ネタが最高にツボでしたね。笑

作風は、監督が『ズートピア』を経て、より風刺やブラックジョークに富むものになっていたように思います。
ネット社会の仕組みを様々なキャラクターで比喩的に表現しているのが見事で、ネットショッピングや動画サイトなどなど、私たちが便利な側面だけ考えているネットの諸々に対して懐疑的に描いているのも印象的でした。

例えば「動画サイト」での1シーン。
ラルフがお金を稼ぐため、自分の動画をネット上のアバターにゴリ押ししていくのですが、このシーンを見ているとYoutubeに度々出てくる"あなたへのおすすめ"をふと思い出しました...。
個人の視聴履歴などによって選ばれているといわれている"あなたへのおすすめ"。このシーンを見ると、お金持ちなど権力を持った人が操作をしている部分が少なからずあるのかもしれないと思ったり。

また、大人向けの広告(キーワードは"人妻")がふらっとラルフの前へ現れるシーンなど、まるで子供へ向けた映画とは思えないシーンが登場するのも衝撃的!
これまでのディズニーでは考えられなかったセリフやシーンが次々と登場するのですが、中でも部屋着を着るプリンセスたちと彼女たちが活躍するクライマックスはその象徴となる場面で、"キレイでおしとやかなプリンセス"というイメージを少しずつ変えようとしている"現代のディズニー像"を代表する重要なシーンと言えるのかもしれません。



このあと、ややネタバレ注意

*******************************************


ところで前作のレビューの際、
僕は『シュガーラッシュ』が"役割"の物語であると書きました。

"ラルフ"と"ヴァネロペ"は、他者から求められる自分の役割に悩み、それを乗り越える。

今回もそのテーマは健在で、
自分の社会的な役割を認める"ラルフ"と
自分のなりたい役割を獲得しようとする"ヴァネロペ"が対比的に描かれていたように思います。

自分のゲームを失ってしまった(いわゆる"ゲームレス"になった)ヴァネロペがシュガーラッシュの世界の大切さに気づく一方、スローターレースの世界で周囲に求められる"自分の役割"を"ありのままの姿"へと近づけていく本作。それは「社会が求める"役割"にどう向き合うか」という前作のテーマに対する新たな答えになっていたように思います。

また、そんな彼らの姿は前作と比べ、今作ではまるで親子のよう。
早く元の世界に戻りたい"ラルフ"
刺激だらけのインターネット世界へ飛び込みたい"ヴァネロペ"
表面的には二人の友情を描いた物語に見える本作ですが、その構造自体が「インターネットに熱中する子供とその利用方法を不安視する親」の様でもあり、その点から、むしろ子供より大人の方が心に刺さる内容だったようにも感じました。


*******************************************



というわけで"新しいことを受け入れる柔軟性"という
本作におけるラルフや、現代の親世代、ひいてはディズニーに求められていることが奇跡的に一致した本作。
正直、前作と比べると普遍性やメッセージの深さでは劣る作品のように感じましたが、"今しか描けないものを描いている"という点がとても貴重で、数十年後、私たちの生きる現代を知らない子供たちと改めて観たいと思う一作でした!!

×××××××××××××××××××××

最後に舞台挨拶のメモを。

菜々緒さんのコメント

・菜々緒さんが吹替を担当しているキャラクター「シャンク」の原語版は『ワンダーウーマン』のガル・ガドッドさんが担当。圧倒的なプレッシャーを感じていたらしい。

・本作に登場するインターネット世界の風景。実はモデルとして東京の原宿が参考にされたとか*
*パンフレットの内容によると、東京のみならず、世界各国の都市をモデルに作り上げたらしい。

・"ヴァネロペ"役の諸星すみれさん。前作では中学生だった彼女だが、今作では大学生に。その声の変化にも注目。

・まるで自分が運転しているかのように没入感のあるレースシーン。菜々緒さんは"ラルフ"演じる山寺さんのうめき声が特にツボだったとか。ちなみに山寺さんは、本作で"ラルフ"役以外にもうひとつ何かの役の声をしている?(ディズニーファンなら分かる役らしい?)

・余談だが、マネージャーと試写会に参加した菜々緒さんは、二人で号泣したらしい。

×××××××××××××××××××××

参考
菜々緒「来年は悪役じゃない役に」 映画『シュガー・ラッシュ:オンライン』大阪で公開初日舞台挨拶 | NewsWalker
https://news.walkerplus.com/article/173824/amp
(折角、メモでまとめたつもりがネットで、すでに記事としてまとめられてました。ネット怖い。笑)

リックロール - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB
(本作に登場する小ネタの1つ。なぜ、そんなパロディをしているのか全く意味が分かりませんでしたが、これを見て納得しました。笑)

Rick Astley - Never Gonna Give You Up (Video)
https://youtu.be/dQw4w9WgXcQ
(こちらはそのパロディ元となったMV)

爆笑のディズニープリンセス集合シーン『シュガー・ラッシュ:オンライン』
https://youtu.be/RflLSdxi7DU
(この動画の0:58秒辺り"ラプンツェル"が言うセリフが本作のハイライトとも。ディズニー・アニメーション・スタジオにおいて"自立したプリンセス像"の原点となった彼女にこのセリフを言わせたことには、大きな意図を感じる。)

【校長室より】女性の自立とディズニー・プリンセス | 大妻多摩中学高等学校
http://www.otsuma-tama.ed.jp/principal/8544
(時代によって変化するディズニープリンセスについて調べてたら、こんなところにたどり着きました。笑)

【レビュー】『シュガー・ラッシュ:オンライン』は本当に2018年のインターネット世界を描いていたか ─ ミレニアル世代の視点から | THE RIVER
https://theriver.jp/sugarrush-ol-net/
(ちょっと批判的なこんな記事も。)

2019/1/4 追記
"ヴァネロペ"のことをずっと"ヴェネロペ"だと勘違いしており、該当箇所を修正。それに合わせ、多少の加筆・修正をしました。
あぁぁあ、一生の不覚だ。ネットで叩かれる...。

2019.5.3 追記。
#映画の中のSNS というタグを追加しました。

201=.6.18 追記。
参考リンクを増やしました
tetsu

tetsu