かえるのエリー

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのかえるのエリーのレビュー・感想・評価

3.6
「哀れなるものたち」の存在に気付いてから1ヶ月ちょっと。それまで名前すら知らなかった監督の作品を、「女王のお気に入り」に続き鑑賞。出来る限り監督を理解してから新作に臨みたい心の表れだ。無論、予備知識は入れずにポチリ。




以下ネタバレ感想




最近やたらとLGBTQモノが多いので、マーティンの登場はまさか恋人?と先ずは思ってしまった。いや、前妻の子?元患者?など右往左往していたら、被害者(と呼ぶべきか)の息子とはね。

怨念?黒魔術?なぜ子供たちが歩けなくなったかは最後まで明かされない。だが何かあると思わせるマーティンがとにかく薄気味悪い。そういう意味では演じたバリー・コーガンが素晴らしく、彼の怪演無しには成立しない作品である。この感覚、初めてポール・ダノを観た時と似ている。

因果応報に見舞われるのは、これまたコリン・ファレルがピッタリ。自分が犯した報いなのに生け贄の選択肢に自分を一度も入れないのも流石。それはギリシャ神話的に見れば、彼が聖なるシカを生捕りにするヘラクレスだからなのか。そして「我々はまた子供を産める」という台詞が母の口から出る様は中々ゾッとさせるものがあった。

ギリシャ神話には雄鹿とあるので、ある意味順当に犠牲となったボブ。おぉ〜「mid90s」の子ではないか! 彼の憂のある表情もまた素晴らしかった。

オープニングとエンディングでの(ほぼ)無音。一方でボブに災難が降りかかる際のBGMが大きくて独特で一気に心拍数が上がったよ。監督のセンスがエグいな。