ベルサイユ製麺

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

4.0
…「ねえ?ゴスの映画の事、みんなブキミって言うんだけど、やっぱそうなのかなぁ?」
「!自覚なかったんすか」
「ふうん…じゃいいよ、もうギャーって感じのキモい映画撮っちゃうもん」
という様な会話があったか否か、あとヨルゴス・ランティモスの一人称がゴスなのか?は不明ですが、今作は過去2作に比べて非常にストレートな恐怖映画になっていると感じました。

凄腕の心臓外科医スティーブン(コリン・ファレル)は、マーティンという成年と人目を忍ぶ様にして度々あっています。マーティンは父を亡くし、母と2人で暮らしている。スティーブンは彼に高価な時計をプレゼントしたり、要求に応じてハグをしたり…。?
ある日スティーブンはマーティンを自宅に招待します。妻のアナ(ニコール・キッドマン)、長女キムに末っ子ボブも直ぐにマーティンに打ち解けます。しかし、その日を境にマーティンはスティーブンの都合を考えずあちこち付き纏う様になります。
そんなある日、末っ子ボブの体に異変が。脚が動かない…。病院で体の隅から隅まで検査するが原因不明。苦悩するスティーブンの元にマーティンが現れ、ある事を告げます。「××××××…」

きゃー!このストーリー説明、固有名詞が入り乱れて読みにくい!!我ながら無能の極み!
冒頭からパンチ強めのシーンがあって、“マカロンマカロンマカロン…”と唱えてやり過ごしました。ふ〜。聖なる鹿と聞くとブラックジャックの“ナダレ”を思い出しますね?そうでもない?
前二作の、閉鎖された共同体の奇妙な営みをただ淡々と覗き見る様なスタイルから、今作は理解不能の酷い目にあう普通の人々の様子を見るというスタイルへのシフトチェンジ。怖がったり、苦悩したりは主人公たちが勝手にやってくれる、言わば“突っ込んでくれる”訳で、とっても分かりやすい。いや、勿論起こっている事の理屈は全く分からないですけどね…。加えて劇伴もプロパーの恐怖映画調(ショックシーンを音で強調してくれたりも!)なので、結果どういう気持ちにさせたがっているのかが明白で、反面底知れなさや感情の判別出来なさは寧ろ後退している様に感じました。
ストーリーはザックリ言えば因果応報(ギリシャ神話がネタ元だそうで、日本で言えば瘤取り爺さんみたいなモノか?)のお話なので、碌でもない結末は不可避という按配です。しかしですね、終盤付近の“命の選別・生き残り戦”の悍ましさときたら…想像を絶する!なんたる面白さだよ!ゴスのやろう!ハネケが親指立てそうだよ👍
あと、マーティンのする事(出来る事)に何の説明もされないのが、後引く怖さでやはりゴスのやろう!と言わざるを得ない。単純にマーティンの佇まいが不穏だし…。
ショットの的確さ、編集リズムの不快な心地よさ等は言わずもがなで、やはりヨルゴス・ランティモスは天才と認めざるを得ない。ひょっとすると分かりやすい、類型的な劇伴もワザとなのかな?
それにしても、この落とし所の見つけにくい結末、…ひょっとしていろんなパターンの台本を並べて、ヨルゴスがニット帽を首まですっぽり被って、ライフル持ってクルクル回ってズドンで決めた、って事な無いかしら?天才?神の思し召し⁇