きよぼん

マンハントのきよぼんのレビュー・感想・評価

マンハント(2018年製作の映画)
3.0
「怪作」というのが、現時点での感想。

ジョン・ウー監督が日本を舞台に撮影し、俳優陣は日本人だけでなく、中国、韓国からも主要キャストに起用されたアクションエンターテインメント。

日本人の目からすれば、最初の製薬会社のダンスなんやねん、居酒屋どうやねんなど、いろいろと気になる点があるのはご愛敬。日本人以外の俳優さんがしゃべる日本語は違和感バリバリ。しかし、舞台が日本であるのに、日本でないという不思議な異国情緒に魅力を感じます。

これから人も映画作りも、国境がボーダーレスになっていく、ならざるをえない状況のなかで、こういう作品はアリだと思わせてくれるパワーにあふれています。日本映画は日本映画のアイデンティティを失って欲しくないと思う一方で、アジア人が力合わせてこういう無国籍アクションつくるのって面白い。映画作りは勝ち負けじゃないけれど、力合わせたらハリウッドに負けないでしょ!夢がありますわー

しかし、魅力はあるものの映画としては大いに疑問が残ります。

たとえば、重要な説明を2,3カットで終わらせたかと思えば、それほど重要ではない最初の殺人事件についての分析にやたら時間をかけます。桜庭ななみの苦悶の演技で出てきた結論がそれなの!?という拍子抜け。人を失うことで泣かせるのはいいけど、前振りがないから泣けない。「これがコードです」それ観てるだけでわかるよ説明いる?という台詞、なぜか食事のシーンにもスローモーションがかかるとか他にもいろいろ。

プロットは破綻していないし、設定関連も冒頭で述べたように無国籍感と考えれば魅力になっているのですが、見せ方というか映画としての作りがなんか変。

あまりジョン・ウー監督の作品を観ていないので、これがジョン・ウー節なのか、中国向けにつくられた?作品だからこうなのかわかりませんが、これって映画文化の差なんでしょうか。

いろいろとごちゃ混ぜ感があって、それが魅力になっているかと思えば、うまくいってないところも多々ある作品。アクションシーンは気持ちアガるし、我らが福山雅治はやっぱりカッコイイ。ばっさりとこれはあかんと切り捨てられないのです。最初のほうで「現時点での」と書いたのは、きっとこういう映画がこれからのアジア映画の形のひとつになって欲しいという気持ちをこめて。何年後かにこの映画が評価されるとき、「怪作」ではなく「マンハントってマイルストーンだったよね」と言われてればいいなあ。
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