tetsu

22年目の告白 私が殺人犯ですのtetsuのレビュー・感想・評価

4.6
アカペラサークルの先輩&友達と一緒に鑑賞!!

2017年、時効が成立した事件の犯人が22年前の殺人を告白する暴露本を発表する。
"事件で大切な者を失った被害者達"は、底知れない憤りに、犯人への復讐を誓うのだった...。

率直に言うと、前評判の良さから相当期待をしていたが、それも越えてくるぐらい、今まで観た入江悠監督作品の中で一番良く出来ていたと思う。

分かりやすく言うと「藁の盾」のパワーアップ版とも言えるが、そこに更に色んな要素がミックスされているので、個人的にはこっちの方が名作だったと思う。

横の席のおじさんがガサガサしてても気にならないくらい圧倒的な緊迫感のあるサスペンスで(笑)、アバンタイトル(←タイトルが出る前の一連のシーン)から重低音の聞いた音楽と共に、圧倒的な緊迫感が演出されていた。

正直、事前情報から開始数分で大体の展開は予想がつくだろうと思っていたが、それでも中盤まであの展開は全く読めなかった...。
序盤から伏線を張りまくっているので、推理をしながら観てみるのも良いと思う。

ところで、大学で社会学部メディア専攻に所属する自分としては、今作で描かれるメディアの形が興味深かった。
犯人の告白を生放送したり、特番で犯人から話を聞く報道番組などを放送するTVというメディアはもちろんのこと、twitter、2ちゃん、ニコニコ動画などのネットメディアもこの作品には登場する。
TVは、震災などが起きた際、いち早くその様子を伝えることができるメリットがある一方で、視聴率を稼ごうと過激な番組をつくり、視聴者に不快な思いをさせることがあると思うし、ネットメディアは、誰でも発信することができるため、誤った情報も多く、テレビと比べると、どうしても一度に発信できる情報量は薄くなりがちなのかな~、と考えさせられた。

自分も、Filmarksで書く文章もそうだが(笑)、情報を発信する一個人としてある程度の責任を持っておきたいと思った。

ちょっと、話が逸れたような気もしますが、続けます。笑笑

物語で挟み込まれる"22年前、実際に起きたある出来事"は、それが自分の地元で起きた出来事だったので、考えさせられるものがあった。
その件に関して深く関わってくるキーパーソンを野村周平が演じているのだが、このキャスティングも彼の地元が僕と同じところであるという意味で、説得力があり、俳優として今まで僕が観た彼の役柄の中で屈指の名演技だった。

この物語、最大のテーマは"遺族が果たすべき責任"だと思う。
何らかの不幸で家族や大切な人を失った人々、その人々がどうするべきなのか?
深く重いテーマではあるが、その答えは人それぞれで、エンドロールで示された1つの答えが複雑な感情を抱かせたことで、観賞後もその問いに自問自答することだろう。
tetsu

tetsu