久々に、ずっと心が苦しい映画だった。
ポートランドに住む15歳のチャーリーは、お調子者で自由人な父親との二人暮らし。母親はチャーリーが幼い時に出て行ったきり。かつては父親の妹マージーも一緒に住んでいたが、兄妹ゲンカして出てってしまった。
ランニングが趣味の彼は、駆ける馬に魅せられ、競走馬の世話のバイトをし始める。ある日、チャーリーの父が、寝取った女の亭主に襲撃され、大怪我をして入院の末に亡くなる。その直後、自分が大事に世話していたピートが売却されることを知ったチャーリーは、ピートをこっそり盗み出し、叔母の住むワイオミングを目指すことに…
言いたいことは何となく分かるけど、悲惨さの連続に対して、対人で命の危険を感じる場面てほんの少ししかなくて、んなアホなって思ってリアリティが感じられなかったのは残念。
ただ、およそ主人公に据えるには静かで地味な青年を、ひたすら見守りながら追いかけるロードムービーは珍しく、見ていて心がバリバリに裂けそうでもスッと最後まで見切った。物言わぬ馬と行き当たりばったりの旅路。普段口数の少ないチャーリーが、ピートに想いを吐露していく。
命の危機に瀕しても、ケンカ別れした妹に頼ろうとはせず、入院費をチャーリーに稼がせた父親。タイミング悪く、父親の最期を看取れなかったチャーリー。連絡先のわからない叔母以外を頼ろうとしなかったチャーリー。前に住んでた場所に友達がいて、電話をかけようとしたけどしなかった。なぜ？
こんな姿を見られたくなかったから。元気にしてると思って欲しかったからなのだと。
見栄っ張りは父親の血を受け継いでる。
チャーリーもまた、「ありがとう」と「ごめんなさい」がなかなか言えない人間。
行き当たりばったりの旅も、少なからずそれが原因で何度もピンチに陥る。
捨てる神あれば拾う神あり
なのに、「ここは僕たちの家じゃない」と、離れてしまう。果てしない荒野を行く、孤独な旅。元々細いのに更にカリカリに痩せて、フラフラ。
そして遂には、取り返しのつかない事態に…
どん底を転がりながらも、まだ若くて、何より運が良かったチャーリー。
悪夢は無くならないけど、少しずつマシになるのだと。
ごまかしたり、大事なところで黙ったりしなければ、あそこまで苦労することはなかったのではないか。とっても不器用な人との付き合い方、それを教えてあげられなかった父親が悪い。
チャーリー、そうじゃないよこうすれば良いんだよって教えてあげたい、って何度も思った…
チャーリー役の俳優の抑えた演技も良いが、やはりMVPはピート！！煮え切らないチャーリーを蹴り上げて欲しかったよ…
乾いた荒野は、人を突き放すようで、それでいて夕焼けや夜空が美しく。
ある程度の素直さと、教育と、温かいご飯と布団。そして、自分の好きなこと。
