もるがな

スプリットのもるがなのネタバレレビュー・内容・結末

スプリット(2017年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

非常に評価が難しい映画。何を言っても野暮になるだろう。シャマランファンであればあるほど、この映画は下調べや事前情報など一切なしで見たほうがラストの衝撃は大きいと思う。抱いていたイメージがガラガラと崩れるほどの不意打ちであり、思考の外からの一撃だった。

ファンではなく、これがシャマラン作品の初見であるなら、視聴前にシャマランの初期の作品を何本か見たほうがいいだろう。それならいまいちパンチに欠けるラストの印象が様変わりするはずだ。

厄介なのは、シャマラン作品の過去作を見ろという感想そのものが、この映画最大のネタバレを示唆してしまうため、結果としてこのようにネタバレ配慮をする羽目になってしまうということだ。

監禁モノとして見ればそこそこの良策で、中盤はややダレるものの、シャマランお得意の懐古趣味にマカヴォイの超人的な演技が加わって異様な雰囲気を醸し出している。後半のホラー映画のお約束を外していく展開も非常に好みで、脱出しようと悪戦苦闘していた友人が、結局脱出できずに殺されてしまうという展開は非常に良かった。

もうここまで引っ張ったので堂々と書いてしまうが、本作は多重人格サイコスリラーであると同時に、『アンブレイカブル』の姉妹作かつ、悪の誕生を描いたオリジンである。Mr.ガラスの起こした列車事故は人の運命を捻じ曲げた結果、ヒーローだけでなく、本作の悪役である隠された24番目の人格「ビースト」の誕生にも関わっており、大いなる戦いの幕開けを視聴者に想起させる。

『アンブレイカブル』の外連味を一切廃したスーパーリアルヒーローの系譜を受け継いでおり、人格変異で身体つきまで変わるビーストも荒唐無稽にならないラインで描き切っている。あれがギリギリのラインで、そのバランス感覚は凄いと思ってしまった。ヒーローものとして見ると、メイン人格が浮かぶ「照明」という表現や、隠された24番目の人格などの厨二設定がより際立って視聴者の瞳に映り、そのワクワク感だけでテンションが上がってしまう。これは心に傷を負った人間が人間の上位存在として反旗を翻す物語であり、そこに綺麗事は存在しない。この映画がこれから作り出すものも含めて、名付けるとするならば帝国の逆襲ならぬシャマランの逆襲であろう。
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