Stroszek

ソウル・ステーション パンデミックのStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

駅=感染経路のハブになっているはずなのだが、夜中なのであまり拡散している様子はない。

この映画内で最初に感染するのが老いたホームレス男性。道端で友人に「すべての人の平等」を説いていた若い男性が、首から血を流す彼を目にして最初は助けようと近寄る。しかしホームレスだと知るや否や、「ホームレスだからいいや」とまた離れる。このシークエンスを見て最初に頭に浮かんだのは、いま話題の仮想通貨取引所コインチェックの社長和田氏が三年ほど前に、「道で倒れている女性がいた。よく見たらホームレスのおばさんだった。心配して損した…」とツイートしていたことだ。なんとも言えないシンクロニシティを感じる。

この助けてもらえなかった老人ホームレスを兄と慕う男がいる。兄のためにシェルターに行ったはいいが先住者に脅されあっさり引き下がり、戦わない。薬を買うときにバラ売りしてもらって、自分のために栄養ドリンクを買うといった、卑小さの描写が絶妙。

前半ではソウル駅周辺で寝泊まりするホームレスの様子が描かれるが、公共交通機関がホームレスを助けない代わりに許容して駅から追い出さない様子が興味深い。

ヒロイン、ヘスンのヒモ彼氏、キウンはスマホを持ってるのにネカフェ通いをしているのは何故だったのだらうか(ヘスンの写真を出会い系サイトにアップするだけだったらスマホでもできるはず)。

ヒロインのヘスンは、いまどきの独立心を持ったタフなヒロイン勢とは異なり、泣くばかりで自分でゾンビを倒さない。あれだけ自分の性的価値を利用しようとしたヒモ彼氏に助けてもらおうとする。逃げるときも男についていき、体力もない守られ型ヒロインの彼女がこの映画で唯一高潔な振る舞いをした登場人物を犠牲にして生き残ったとき、私のイライラは頂点に達した。最後に彼女はゾンビになってしまうのだが、「その方が幸せだったかもな」と思ってしまった。

[鑑賞メーターから転載]

2016年。ソウル駅周辺でゾンビ・パンデミック発生。風俗店から逃げ出したヘスン、彼女のヒモ、キウン、彼女の父親を名乗る男を中心に物語は展開。『新感染』の前日譚。老人のホームレスという、セキュリティ・ネットから漏れた人からまず感染、人が集まる公共施設(駅、病院)が危険地帯になるというのがリアル。ゾンビに追い詰められた人々に対し警察が取る手段が隔離。「違法な集会への参加」と、真夜中にデモが起こったかのように装いゾンビの発生を隠蔽するのが恐ろしい。最終的に、「この人はゾンビになった方が幸せかも」と思わせる結末。
Stroszek

Stroszek