しめじろー

ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺんのしめじろーのレビュー・感想・評価

3.8
舞台は1882年のロシア。北極付近で消息を経った祖父を探すため、一族の名誉を取り戻すため、1人の少女が北極を目指す。『宇宙よりも遠い場所』の過酷バージョンって感じです。ポスターの印象から、ファンタジー世界の話なのかなと思っていたんですが、なんと現実世界のお話でした。

まず絵が良い。色がきれい…。主線のないシンプルな絵なんですけど、驚くほど表情豊かです。主人公サーシャが北極を目指そうと決心した瞬間の眼差し。戸惑い逡巡するわずかな瞳の揺れ。鉛筆の芯が折れる瞬間の動き。大袈裟ではない素朴な表現なのに、感情がこれでもかと伝わってきて、見入ってしまうほど素晴らしかったです。アニメーション技術の高さよ…。特に吹雪のシーン、すごい。吸い込まれそう。スノボでめちゃめちゃ吹雪いたときの、ほんの1m先も見えない恐怖を思い出しました。
ストーリーもよかったです。少女の反撃と成長物語ですが、内容はかなりシビア。サーシャに襲いかかる困難がマジで困難。北極行きの船に乗る前だって大変だったのに、いざ北極圏に入った後はさらに状況がどんどん悪くなり、人もギスギス、これは無理ゲーでは…?と思わせる容赦なしアドベンチャーでした。しかしそんな困難を乗り越えながら、ときには挫折しながら、必死で前に進むサーシャ。ヒーローではない一人の少女として、等身大な主人公でした。
ラストはさっぱり終わってちょっと物足りなさもあるものの、高レベルですっきりまとまったとっても良作アニメでした。