しめじろー

ニュー・シネマ・パラダイスのしめじろーのレビュー・感想・評価

4.9
もうじき休館してしまうユジク阿佐ヶ谷で鑑賞。ここで見れて幸せでした。チケット、ものの数分で完売してたな…。

あまりにも有名な本作。高校1年のときに一度、映画好きの友達に勧められて見たことがあります。当時はあまり映画を見慣れていなくて、エレナとの恋愛ストーリーになったあたりで寝落ちしてしまったな…。まだまだ"トト"だった私には良さがわからなかった。
あれから映画が好きになって、故郷を離れて"サルヴァトーレ"に近付いた今、あの頃とは違う種類の感動というか、あの頃には気付けなかった映画の奥行きみたいなものを感じるのでした。

全編通して、映画という文化への愛、賛美が込められています。ぎゅうぎゅう満員の映画館で、みんなで笑って、泣いて、歓声を上げて…。好きすぎてセリフを先に言っちゃうおじさんもいれば、映画そっちのけで愛を育む恋人もいるし、赤ちゃんに乳をあげる母親も、映画に興奮してポックリ逝ってしまう人もいる。あの映画館は…そして映画は、人生の姿そのものだ。映画への賛歌、映画館で映画を見ることの喜びを再確認させてくれます。ああ、最高の映画を見た劇場内でふと目が合った人と結婚したい人生だったな。
そんな映画ファンとしての贔屓目を差し引いても、ほのぼのハートフルな日常も、クスッとくるコメディも、歴史物としても、重厚なヒューマンドラマも、すべて高レベルでまとまっているよくできた映画だと思います。

「私達を忘れろ。帰ってくるな。もうお前と話したくない。お前の噂を聞きたい」
「お前が住むのはあっち。ここにあるのは幻だけ…」
アルフレードの思いも母の思いも今ならわかるし、その言葉が真理であることもわかります。それでも、あの映画に夢中になった幼い頃の思い出が原点となって、今の自分を突き動かしている。あの有名なラストシーンは、ただのノスタルジーだけでなく、アルフレードのエールを背に自分の原点を見つめる、未来志向の結末だと感じました。

音楽良すぎるな…と思ったらエンニオ・モリコーネ!!やっぱりすごい人だ…。
歳を重ねて、"アルフレード"に近付いたときに、また見たい映画です。