しめじろー

Mommy/マミーのしめじろーのレビュー・感想・評価

Mommy/マミー(2014年製作の映画)
3.9
うまくやるって何なのか。「うまくやれない」ことはそんなに罪なのか。罪…。罪、なんでしょうね。この人間社会で、管理できない要素の存在はそのものが悪なのでしょう。

開幕早々、あまりに狭い画面サイズでびっくりしました。1:1でしょうか?正方形の小さい画面に映し出されるのは基本的に顔のアップ。攻めています。映画中盤で画面サイズが広がる演出がありますが、思った以上の開放感。視野が一気に広がり、これこれ!これが普通よ!と心が躍りました。画面サイズは母の閉塞感と連動している。"普通"を感じる、息子の障害を忘れるときに画面も普通サイズになるのかもしれません。
あらすじも知らずに見ましたが、開始数秒で"発達障害の子とその母"という題材を察して、ウッとなりました。身近にいるのでね…。個人的になかなか客観視できないテーマです。デリケートで各ケースによるところの大きい題材ですが、しかし隣人カイラの存在がとてもいいアクセントになっており、物語に奥行きを与えていました。

両方身近にいます。発達障害を持つ息子を育て続けるAさん。発達障害を持つ息子から逃げたBさん。
Aさんは、本当に厳しく息子を育てていて、幼い頃から近くで見ていた私からすると虐待では…?と思うこともままあった。でも確かに愛もあって、今では息子はしっかり働いていて、趣味の水泳で大会に出ることを自慢げに話してくれる。ある日Aさんから、相続の相談を受けたことがある。私が死んで、不動産が息子に渡ったら、悪い人に騙されて全部取られてしまうかもしれない、と。Aさんは、あの息子の将来を夢想するシーンのような、あんな夢を見ただろうか。こんなはずじゃなかったなんて思う、そんな夜もあるのだろうか。
Bさんは、とにかく息子がかわいくて、親族の私から見てもあまり厳しくは育てていないように感じた。蝶よ花よと育てられた息子はわがままに育ち、Bさんを殴ることもあった。それでもBさんは甲斐甲斐しく血肉を注いで息子を育て上げ、ある日、プツンと糸が切れてしまった。Bさんは蒸発してしまった。蒸発といっても親族は居場所を知っていて、私も時々会ったりするけども、自分が息子から逃げたことを後悔しながらも、戻るつもりはないらしい。Bさんは、希望を選択したのだろうか。
いろいろな母がいて、いろいろな息子がいる。どちらが良いとか、どちらの愛が深いとか、そういうつもりは全くない。私は独身で、母の気持ちは推し量るしかないけども、きっと想像よりドライで、想像より深いのだろうと思う。そう思うと、この映画にあんまり高得点はつけたくないのです。