タスマニア

ドリームのタスマニアのレビュー・感想・評価

ドリーム(2016年製作の映画)
4.0
2022年29本目。

一人のエンジニアの目線としてこの映画を見たとき、エンジニアの葛藤や喜びや諸々の感情が詰まっている映画だった。
黒人や女性の立場に関する描写やテーマを差し引いても、ただただ人類の夢である "宇宙" をターゲットと設定したときの、人類とエンジニアリングの関係の変化が感慨深くて、それだけで割と胸熱だった。
そう言う意味では、個人的に宇宙工学系の映画としては割と完璧に近い映画。

シンプルにパラメータの変化による再計算やシミュレーションを一瞬で行えるコンピュータの登場って、圧倒的イノベーションだったんだなって思う。コンピュータが人類に与えた進歩に思いを馳せながらも、一方で、あの計算量を人力でこなすキャサリンの能力の凄まじさにも驚かされる。

高い能力が必要な場所で適切に発揮されるようになっていく筋書きは心地よいし、現代の仕事においても常に望まれる社会の姿勢だと思う。
人種や性別やその他の訳のわからないしがらみが、その障壁になるのはすごーーーくモヤモヤするからね。
そういった意味で、非白人用トイレがぶっ壊されて、ただのトイレになる瞬間のカタルシスや、「女性が参加しないこと」が常識になっていた重要な会議に「キャサリンが参加すること」が合理的と認められた瞬間なんて脳汁出るわ笑
どこか軽く見られたり、馬鹿にされている人がふとしたきっかけで周囲に認められる展開って、いつどこでも胸がジーンとなるんだよな。
「イミテーション・ゲーム」も同じような文脈で、特定の人の才能が認められる展開は泣いたしな。

キャサリン・ドロシー・メアリーの三人が才能溢れた、格好いいのは言うまでもないけど、この映画は他にも格好よくてイカしている登場人物がいっぱい出ていた。
とりあえず、ケヴィン・コスナーが演じる本部長好き!笑
最高に格好いい。絶対についていきたい上司だぜ。
高いミッションとビジョンを持っていて、その理想のために人に圧倒的に厳しくなれるし、同時に必要だと判断したことは迷わず実行する姿。
ずーーっとイカしていて、この役が一番好きだった。
あと、マハーシャラ・アリがシンプルに格好いい。
最初の登場からかっけーーって感じで、役柄そのものというより、なんか格好良かった。
そして、地味に宇宙飛行士のグレンもイカしたキャラクターだった。
ユーモアに溢れていて、偏見といった余計なことに全然囚われていない姿がめっちゃ良かった。
「やっぱり信頼できるのは人間だ」というセリフは気持ちはわかるけど、ちょっと複雑な気持ちもあるけど。

こういう史実に基づいた映画の醍醐味の一つでもあるけど、エピローグに登場人物達のその後をテキストで伝えるやつ。
それを読むだけでも、如何にあの三人が歴史に残る偉業をやった女性達だったかが分かる。
ある意味他人のことなのに、これだけ胸が熱くなったことからも、この映画がすごく優れた映画だったことも分かる。
個人的には FORTRAN の必要性を見抜き、チームメンバーの育成に事前に投資したドロシーの先見性が一番すごいと思った。
「IBM のコンピュータのサイズを事前に計測してなかったから、部屋に搬入できず、扉をぶっ壊す」という、ちょっと間抜けな展開を見てるからこそ、対比的に彼女の優秀さが際立って見えたな。
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