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ドリームのTEPPEIのレビュー・感想・評価

ドリーム(2016年製作の映画)
4.6
本作はあくまでアメリカ初の有人宇宙飛行計画に奮闘した者たちを描いているのに、邦題が「ドリーム」だとか「私たちのアポロ計画」とかもうねアホかと。結果的に副題は消されたが、これは汚点。原題のHidden Figuresは隠された数字と隠れた人物たちという2つの意味があり、このタイトルは素晴らしい。NASAで計算手として活躍した黒人女性たちの実話をもとにはしているが、オリジナルキャラクターでより関係をわかりやすくするなどの処置が演出されている。この映画は実在の人物であり、本作の主人公であるキャサリン・ジョンソンが大絶賛しただけあり上質な演技とリアリティを感じる演出を下敷きに、テンポよく描いた娯楽作である。南部バプテスト教会の普及と、キング牧師による非暴力的な革新の時代、女性というだけでなく黒人である計算手たちの差別・偏見との戦いも見どころであり、人間の大きな意思によって動かされる人々が分かりやすく描かれている。特にオクタヴィア・スペンサーの素晴らしい演技力と、頑固オヤジ代表のケビン・コスナーが新たに取り組まれた演出を引き立てている。例えばcolor onlyとなっていた施設をNASA施設にも入れてみたり(実際NASAに分離主義的なものは存在せず、このような施設もなかったがこれも映画の演出である)、ニグロに対する見解など私たち日本人からすれば馴染みのないテーマだろうが新書とか読むのが嫌ならこの映画を1本見るだけで、アメリカがどれほど宗教的か分かるはず。実際アイゼンハワー大統領時代から政治と宗教を取り合わせていたこともあり、アメリカ史において重要な部分をユーモラスにしている本作は素晴らしい。オリジナルキャラクターを演じたキルスティン・ダンストはちょっと老けすぎじゃないか…と思ってしまった。一瞬、ジョーン・アレンに見えた。
総評として、「ドリーム」(笑)ではなくHidden Figures は優秀なストーリーラインと上質な役者たちの演技が最後までマーキュリー計画に奮闘した姿を魅せてくれる。非常にいい映画である。
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