ベルサイユ製麺

アシュラのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

アシュラ(2016年製作の映画)
4.0
札束をスポンジがわりに、血で血を洗う最低最悪のバトルロワイヤル。悪の蠱毒ができちゃうよ!
悪党が入り乱れる映画は多々ありますが、悪党の姑息さも凄惨さもここが極点でしょう。これ以上いくとファンタジーの類になります。
主人公の悪い状況がどんどん重なり、よくもこんな酷い方にばかり流されるものだなぁと思って観てましたが、よくよく考えると大概の出来事が彼自身の場当たり的な行動によって引き起こされていて、ひょっとすると強い信念を持ってないヤツが一番厄介なのかもしれませんね。
アクションは全編流石のクオリティで、特に終盤の修羅場は傑作ゾンビ映画のクライマックスさながらです。カーチェイス、とかくボーンシリーズをリスペクトしがちな韓国映画にあって、意識があやしい状態での夜のカーチェイスは『お?プリズナーズなの?』とか舐めてましたが、それどころじゃない。もうめっちゃくちゃです。どうやって撮ってるのか見当もつかないよ…。
役者陣の演技ももちろん素晴らしいのですが、それ以前にキャスティングの妙もありますね。普通の感覚だと市長と検事の配役は逆だと思うんですが、これが恐ろしいほどハマってる!なるほど確かに怖いのは、小柄で何でもやる狂気の男と大柄なのに理詰めの冷酷な男な気がします。逆だと普通ね。
主演のチョン・ウソンの、切れ者なのかハッタリだけなのか分からない様な立ち回りが最高です。後半ずーっと具合悪そうで、そういえば全編を包む悪夢的な空気感は、高熱を出した時の、何かに操られてる様な感じに似てる気がします。ちょっと『ダークナイト』みたいな感じもあるのだよな。
他にも“グラスぼりぼりはジョニー・トーオマージュ?”とか“通り名が棒切れって…”とか、言いたい事がいくらでも思いつく、本当に楽しめる作品です。もし日本で作ったら、やたらぎゃあぎゃあ喚いたり、薄い血糊を撒き散らしてばっかりのコメディ崩れみたいになる事必至で、韓国映画の基礎レベルの高さ、本当に羨ましいですね。傑作!