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おんな極悪帖のotomisanのレビュー・感想・評価

おんな極悪帖(1970年製作の映画)
3.8
 佐藤慶を筆頭に小松方正、田村正和、芦屋小雁で脇を固めたら安田道代が善導されるわけがない。おかげさまで、櫓下のじごく上がり、ご乱心気味な森殿さまの若君の御母堂にあらせられるお部屋様という、まさに地獄極楽のぞきからくりの上がりのような今の身の上なんだが、欲は尽きせずまだ道半ばという貪婪さ。

 寝ちゃあ殺しで方正医者と慶家老を葬って、腹心の侍女小山明子を森殿さまがまさかのお戯れで正和に斬らせるハプニングだが仕方ない。結局、ご正室暗殺の嫌疑から家老殺害の一部始終まで殿にバレての絶体絶命を凶剣正和の返り討ちで丸く収めて、晴れて次代藩主、若君の御母堂で側近には正和もいて両手に花とは出来過ぎなこと。
 果たして因果が巡るのかのぞきからくりのお終い同様、正和に毒を盛った若君が、正和今わの際で道連れにする母道代の地獄落ちを後の世に救ってくれるのか?あの毒婦ぶりでも最後の男は若君なんだなあ。

 原作谷崎と云うのなら、実はここからが想像の巡らし処というやつだ。奸婦、妖婦の死に際に在江藩士一同が集まり、ご正室の存命を宣告する最中、誰一人、修羅場の中の若君を保護しようとは動かないのに留意したい。
 誰の胤か分からないが、この妖婦の子には違いなく、もし、あの森殿の実子であるとしても、さればこそ藩士一同、主君に戴くのは願いさめな最凶血脈に違いない。
 そうなれば知れたこと、若君すり替えの後、こちら本物は身の上知らず、どこかの寺にでも預けて知らぬがホトケと決め込むことだろう。何十年も後、御坊が「目連尊者」にでもなったら、のぞきからくりよろしく厚く施餓鬼を施して業にまみれた母者を慰めるんだろう。
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