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フェンスのSPNminacoのレビュー・感想・評価

フェンス(2016年製作の映画)
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大量のダイアローグ、限定された場所。舞台の映画化なので、ほぼそのまま舞台劇を観ている感じ。セットのような街路と登場人物が統一感ある色調で美しく調和してたし、デンゼル・ワシントンとヴィオラ・ディヴィスの台詞回しの巧さに唸る。2人の息子と愛妻、面倒を見ている叔父や親友に囲まれ、ゴミ収集の仕事で一家を養うトロイ。野球選手を断念した彼は、長男の音楽も次男のフットボールも認めない。苦労人で尊大に振る舞う家長の姿は、まるで昭和のカミナリ親父だ。人に犠牲を強いるその古臭い価値観、60年代末の米国黒人と高度成長期の田舎の日本オヤジが重なってしまってしんどい。やがて自ら撒いた種で家族はバラバラになってしまうのだが…このエンディングはやはりアメリカらしいものだった。
父と子、聖母や天使、築いたフェンスと天国の門、そしてベースボールというモチーフが絡み合う脚本(戯曲)は密度が濃く、家族の一時代を切り取ってその前後の歴史をも物語る。清濁併せ持つトロイという男を肯定する気にはなれないが、かといって裁く者もいない。地上に残るのは壊れた家庭と越えるべきフェンス。
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