ちゃんちゃん焼き

ムーンライトのちゃんちゃん焼きのネタバレレビュー・内容・結末

ムーンライト(2016年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

まさかの読み上げ間違い(正確には渡されたカードが間違いだった)があったアカデミー賞で、作品賞、助演男優賞、脚色賞を受賞した作品。是非とも観たかった。
主人公シャロンの三段活用といった構成で、幼少期、青年期、成人の3つに分かれている。
3つ目を観た時、違和感を覚えた。シャロンは外見も中身も別人のようだった。いじめられ、痩せ細ったシャロンはいない。おまけに自分の母を苦しめた麻薬の売人になっていた。その姿は、子どもの頃自分を助けてくれたフアンそっくりなのだ。彼への憧れからなのか。本当は彼に特別な愛情を抱いていたのか。その答えははっきりとは描かれないが、シャロンが同級生を椅子で殴り、アトランタの刑務所に送られ、そこで何とか掴んだ仕事が売人だった。生きていくのにはそれしか選択肢がなかったのだ。フアンのように身体を鍛え、「オカマ」と言われないように、いじめられないように生きていく。おそらくそう決めたのだろう。
しかし、シャロンは変わっていなかった。好きだった友人と再会した時のシャロンは、子どもの頃そのままのあどけない顔を見せる。
観終えた後、はじめはストーリーも音楽もどこかちぐはぐな印象を受けた。しかし、エンドクレジットを観ているうちに、人生とはぼんやりしたものなのだ、それを特殊な主題で切り込んだ作品なのだ、とも思った。
黒人社会のLGBT、ホモフォビア、犯罪、貧困といった重いテーマなのに、つらさや極端な暴力シーンを直接描かないことで、映画全体は淡く青白い光に包まれ、不思議と美しいのだ。

はじめに間違えて発表されたララランドとの作品の違いは一目瞭然。心に残るものが作品賞だとすれば、断然こちらの作品だと感じた。